占有権
成立要件
第百八十条
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
※意思能力のないものは占有権を取得できません。
第百八十一条
占有権は、代理人によって取得することができる。
※意思無能力者は、法定代理人を通じて占有します。
占有の意思
第百八十五条
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
自主占有 所有の意思をもってする占有(売買の買主等)
他主占有 所有の意思をもたずにする占有(賃借人等)
※無過失は推定されません。
占有権と相続
民法に規定はありませんが、判例は相続を認めています。(最判S44.10.30)
占有権の効力
第百八十八条
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
※「占有物について行使する権利」とは、占有を正当化するすべての権利(所有権その他の物権、賃借権等の債権)(大判T4.4.27.)
果実取得権
善意占有者
第百八十九条
悪意占有者
滅失・損害責任
第百九十一条
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
費用償還請求権
必要費
第百九十六条
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
※善意・悪意問わず。
有益費
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
※悪意の占有者は有益費の支払いを待たずに留置権を失い、すぐに返還しなければなりません。
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動産物権変動 即時取得
即時取得
第百九十二条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
要件
・目的物が動産であること
登記されている立木、登録を受けている自動車、(未登録は車は動産)金銭は含まない。
・取引行為での取得であること
売買、贈与、代物弁済、強制競売。事実行為や相続等は含まない。
有効な取引行為でなければならない。(詐欺、脅迫、錯誤、無権代理者との取引等は例外)
・前主が無権利であること
・平穏・公然、善意・無過失
占有開始時であれば足ります。無過失を立証する責任はありません。
・占有の開始
占有改定と即時取得
占有改定による即時取得は認められません。(最判S35.2.11)
占有移転と即時取得
指示による占有移転は認められます。(最判S57.9.7)
盗品及び遺失物の特則
第百九十三条
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
※詐欺により騙された場合はこの適用はありません。
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動産物権変動 明認方法
明認方法とは
土地に定着するもの(立木や未分離果実等)について、習慣上の公示方法で判例により対抗要件として認められたものです。
※取引上の必要がある場合は、立木法が定める立木登記または明認方法を施すことにより、土地とは別個の独立した物として扱われます。
明認方法は、第三者が利害関係を有するに至った時点において存続していないと対抗力が認められません。(最判S36.5.4)
対抗力
立木のみの二重譲渡
明認方法を先に施した方が優先します。
立木のみの譲渡と土地及び立木の譲渡
土地とともに立木を譲渡する場合の対抗要件は土地についての所有権移転登記になります。
優劣は、立木の明認方法か所有権移転登記の先後になります。
立木所有権の留保
留保も物件変動のひとつであるとして、明認方法を施さない限り、立木の所有権を第三者に対抗できない。(最判S34.8.7)
土地及び立木の二重譲渡
立木のみの明認方法と所有権移転登記
AがBより土地と立木を買い受け、立木のみ明認方法を施した場合、BはさらにCに立木と土地を売渡、Cは土地の所有権移転登記を済ませた場合
土地と共に立木を譲渡した場合は、土地の所有権移転登記が対抗要件となります。
※Aの立木の明認方法が先でも関係ありません。
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動産物権変動 対抗要件
引渡
引渡がなければ第三者に対抗できません。
第百七十八条
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
※所有権に限られます。
・現実の引渡
第百八十二条
占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
・簡易の引渡
第百八十二条
2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
・占有改定
第百八十三条
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
・指示による占有移転
第百八十四条
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
※代理人の承諾は必要ありません。
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取得時効と登記
時効完成前の第三者
AはBが所有する土地の占有を行いましたが、Aの取得時効完成前にBがCに土地を売り渡し、その後、Aの取得時効が完成した場合。
時効完成前の第三者に対して、自己の所有権を登記なくして主張出来る。(大判T7.3.2 最判S41.11.22)
時効完成後の第三者
AはBが所有する土地の占有を行い取得時効を完成した。その後、BがCに土地を売り渡した場合。
Aは登記なくしてCに自己の所有権を主張出来ない。(最判S33.8.28)
(Aは取得時効が完成したのに、登記を怠っていたので仕方ないとする対抗要件主義)
※Cが背信的悪意者の場合は登記なくしてもAは自己の所有権を主張出来る。
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