債権・4
詐害行為取消権
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
債権者側の要件
被保全債権が(原則)金銭債権であること。(特定物債権でも行使可能ですが、特定物債権に発生する損害賠償債権保全のために認められ、特定物債権そのものの保全のためには認められません。)
詐害行為前に被担保債権が成立していなければなりません。
物的担保を有する債権
担保物の価格が債権額に不足する限度で行使できます。
物上保証人の場合は債権の全額に対して行使できます。
人的担保を有する債権
保証人や連帯保証人がついている債権に対しては全額に対して行使できます。(判例)
債務者側の要件
無資力であること。
財産権を目的とした法律行為であること。
債務者に詐害の意思があること。
行使方法
裁判上の行使です。
行使の相手方
受益者・転得者になります。
※善意の相手方には行使できません。
行使期間
第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
※「取消の原因を知った時」とは債権者が詐害の事実を知っただけでは足りず、債務者に詐害の意思があることを知ったときからです。
効果
前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。
金銭は、直接自己に引き渡すように請求できます。(判例)
不動産の登記は直接自己に対する移転登記を請求することはできません。(最判S53.10.05)
※すべての債権者には取消の相手方である受益者は含まれません。
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債権・3
債権者代位権
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
※上記の成立要件は債務者が自らその権利を行使しないときにできます。
被保全債権は原則として金銭債権である必要があり、債務者が無資力であることが必要です。
対象となる権利
判例で認められたものは、(金銭債権以外)
・移転登記請求権
・抹消登記請求権
・妨害排除請求権
・債務の消滅時効の援用、などです。
・形成権(取消権・解除権・買戻権など)
・代位権
・第三者による錯誤無効の主張(表意者が錯誤無効を認めている場合)(最判S45.3.26.)
対象者とならないもの
・一身専属権(離婚請求権、認知請求権、夫婦間の契約取消消権、離婚による財産分与請求権、遺留分減殺請求権、慰謝料請求権など)
・権利行使を債務者の意思のみにゆだねるのが妥当なもの
・差押を許さない権利
行使方法
債権者が自己の名で行使し、裁判上、裁判外でも行使できます。
相手方の地位
すべての抗弁が主張できます。(相殺の抗弁・同時履行の抗弁権・権利の消滅の抗弁など)
範囲
債権の保全に必要な範囲までです。
請求内容
物の引渡を求める場合には、直接自己への引渡を請求できます。
債務者による処分の禁止
裁判上の代位について債権者が債権者代位権の行使の着手を債務者に伝えたときは、債務者による権利の処分が禁止されます。(非訟事件手続法88条3項)
※裁判外にも類推適用されます。
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債権・2
債権の対内的効力
債務者に対しして主張できる効力のことをいいます。
履行の強制
直接強制
債務者の意思にかかわらず、国家権力に力で債権の内容を直接的に実現することです。
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
代替執行
2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
間接強制
債務者に一定の金銭の支払義務を課すことにより、債務者を心理的に圧迫して、間接的に債務の履行を強制することです。(民事執行法172条)
ただし、債務者の自由意思が尊重される債務については認められません。
判例は、幼児の引渡義務については認めています。(大判T元.12.19)
妻の同居義務については認めていません。(大判S5.9.30)
債務不履行
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
※相当の期間を定めて催告しても履行がない場合は契約の解除もできます。
・履行遅滞
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
要件
① 履行が可能なこと
② 履行期が経過したこと
③ 債務者の帰責事由に基づくこと
④ 遅滞が違法であること
損害賠償請求
遅延賠償と履行の請求できます。
填補賠償もできますが、原則として債権者が契約を解除したときに認められます。
※履行遅滞後、相当の期間を定めて催告している場合は契約を解除せず、填補賠償の請求もできます。(判例・通説)
損害賠償の範囲
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
損害賠償の方法
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
過失相殺
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
損害賠償の予定
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
※あまりに高額の予定は90条に違反す限度で無効です。
損害賠償による代位
債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
・履行不能
要件
① 債権成立後履行が不能になること
② 債務者の帰責事由に基づくこと
③ 不能が違法であること
効果
履行の強制は認められません。
損害賠償請求
填補賠償が請求できます。
※一部が不能となっただけでしたら、不能の部分のみの填補賠償になります。
契約の解除
催告なしで解除できます。
・不完全履行
要件
① 履行が不完全なこと
② 債務者の帰責事由に基づくこと
③ 不完全履行が違法であること
損害賠償請求及び完全履行請求
追完不能な場合は損害賠償請求を行います。
契約の解除
追完不能な場合は即解除できますが、追完可能な場合は相当期間を定めた催告後、解除できます。
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債権
債権序説
債権の発生
特定の人が特定の人に一定の行為を請求する行為を債権といい、一定の行為をなす義務を債務といいます。
債権の目的
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
善管注意義務
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
種類債権
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
※種類債権は善管注意義務を負いません。
債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
2 債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
3 前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
利息債権
利息は当事者間で合意がなければ、民法上は無利息になります。
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
※約定利率の上限は利息制限法で決められています。
法定重利
利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
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