債権の消滅 3
弁済受領権者
受領権限のない者に弁済した場合
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
※債権の準占有者とは、取引観念上債権者らしい外観を有するものです。
真の債権者は債権の準占有者に対して、不当利得による返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権を行使できます。
前条の場合を除き、弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
受取証書の持参人に対する弁済
受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
※受取証書は真正なものでなければならず、偽造されたものは無効です。
債権者に受領権限がない場合
債権の差押
支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2 前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
※債権者が破産手続開始決定を受けたときは、破産管財人に対して弁済しなければなりません。
弁済受領者義務
受取証書の交付
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
※弁済と受取証書の交付は同時履行の関係にあります。(判例)
弁済の充当
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
3 前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
法定充当
弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
代物弁済
債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
本来の給付と同価値である必要はなく、給付の種類に制限もありません。
不動産の場合は対抗要件を具備(登記)をしなければ、代物弁済の効力は発生しません。(判例)
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債権の消滅 2
弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
※代位と債権譲渡は似ますので第四百六十七条規定が準用されます。
法定代位
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
正当な利益を有する者
・自ら債務を負っていないが、債務者の意思に反しても弁済できる利害関係を有する第三者
物上保証人・抵当不動産の第三取得者・後順位担保権者等
・自ら債務を負っているが、債務者との関係では実質上他人の債務の弁済となる者
保証人・連帯保証人・不可分債務者等
※債権者の承諾はいりません。
任意代位
正当な利益を有しない者です。債権者の承諾が必要になります。(499条1項)
効果
前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
2 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
※一部弁済において、抵当権付の場合には債権及び抵当権は原債権者と代位者との準共有になります。
代位者相互間の効果
保証人が複数いる場合
共同保証人が分別の利益を有する場合とそうでない場合とで異なります。
物上保証人が複数の場合
不動産の価格の割合です。(501条4項)
保証人と物上保証人がいる場合
501条5項 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
保証人・抵当不動産の第三取得者間
501条1項 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
※第三取得者出現後に保証人が弁済した場合は、代位の付記登記は不要です。(最判S41.11.18)
代位者・債権者間の効果
第五百三条 代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
2 債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
第五百四条 第五百条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。
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債権の消滅
消滅原因の法律的性質
法律行為
・債権者の行為→免除
・債務者の行為→相殺・供託
・債権者・債務者の行為→代物弁済、更改
準法律行為
・弁済
事件
・混同、債務者の帰責事由によらない履行不能
弁済の提供
要件
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
特定物債権
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
※履行期までに特定物が壊れていても引き渡しを行えばそれで足ります。
種類債権
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
他人の物を引き渡した場合
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
※弁済をされたものが即時取得の要件を満たす場合は、有効な弁済となります。
前二条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
譲渡能力のない者よる引渡
譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
弁済の場所・時期・費用
弁済の場所
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
弁済の時期
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
弁済の費用
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
方法
現実の提供
債権者の協力がなくても、債務者自身で給付の主要な部分を完了すること。
口頭の提供
債権者があらかじめ受領を拒絶してる場合
債務者が弁済の準備を行うことにより債務履行を逃れます。(催告します。)
債務の履行につき債権者の行為が必要な場合
弁済の準備をしたうえで、債権者に通知します。
口頭の提供すら不要な場合
債権者の受領拒絶の意思が明確なとき(最大判S32.6.5)
効果
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる
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