抵当権・2
被担保債権の範囲
担保される利息の範囲
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
目的物の範囲
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
※従物が抵当権設定当時宅地の常用のためにこれに付属させられたものであるときは、この従物たる物権にも及びます。(最判S44.3.28)
特段の事情がない限り賃借権にも及びます。(最判S40.5.4)
果実の対する効力
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
※原則として及びません。
物上代位の目的物
・売却代金
304条の規定を準用します。
目的物の売却代金にも物上代位権を行使できるとするのが通説です。
・賃料
抵当不動産の賃料債権に対する物上代位権の行使は認められています。(最判H10.27)
ですが、転貸賃料債権については認められていません。(最判H12.4.14)
・抵当不動産の保険金請求権
認められています。(大連判T12.4.7)
抵当権の順位
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
抵当権の順位変更
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
※利害関係を有する者とは順位変更により、不利益を受ける者です。(転抵当権者等です。利益を受ける者と抵当権設定者の承諾は必要ありません。)
抵当権の処分
抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
種類
・転抵当
抵当権者が抵当権を他の債権の担保にすることです。原抵当権と転抵当権、双方の弁済期が到来していれば目的不動産の競売ができます。
・抵当権の譲渡
譲渡を行った場合、受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。(譲渡人の配当額の分で振り分けられます。抵当権自体が移転するのではなく、弁済優先権が移転します。)
・抵当権の放棄
同一の債権の債権者に対して、無担保の一般債権者に対する関係で放棄することです。放棄した抵当権者の本来の配当額の内で債権額の割合に応じて、受益者と振り分けられます。(抵当権者の配当額が600万で受益者の債権が400万の場合、3:2で振り分けられ、抵当権者が360万、受益者が240万となります。)
・抵当権の順位の譲渡
自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に取得させることです。受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。
・抵当権に順位の放棄
自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に対する関係で放棄することです。配当額は抵当権の放棄と同一です。
対抗要件
前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
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