親子
実子
嫡出推定
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
※内縁関係にも適用されます。(最判S29.1.21)
父を定める訴え
第七百七十三条 第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
推定されない嫡出
・772条を満たしていませんが、婚姻成立後に出生した子であれば、嫡出子の出生届があるときは、常に嫡出子として受理されます。(先例)
・772条を満たすが、夫による懐胎が不可能な事情が存在するときは、その子は夫の子であることの推定を受けません。(最判S44.5.29)
嫡出の否認
第七百七十四条 第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
嫡出否認の訴え
第七百七十五条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
嫡出の承認
第七百七十六条 夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。
※夫が出生届を提出しただけでは、承認したことにはなりません。(先例)
嫡出否認の訴えの出訴期間
第七百七十七条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。
第七百七十八条 夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。
親子関係不存在確認の訴え
・推定されない嫡出子
・推定の及ばない子
上記に関しては、親子関係不存在確認の訴えで争います。
※出訴期間はありません。
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婚姻の解消 2
裁判上の離婚
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
※上記1~4に該当する場合の相手方が有責配偶者となり離婚原因とされます。判例では有責配偶者からの離婚請求も認められます。
相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合に、相手方配偶者が離婚請求を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許させれないとすることはできない。(最判S62.9.2)
婚姻関係が破綻していたときは、特段の事情がない限り、不貞行為の相手は不法行為責任を負いません。(最判H8.3.26)
協議上の離婚の規定の準用
第七百七十一条 第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
内縁
法律上の婚姻として扱われませんが、婚姻に準ずる関係とされています。(最判S33.4.11)
効果
婚姻と同等の効果があります。
同居・協力・扶助義務(大判T10.5.17)
貞操義務(大判T8.5.12)
婚姻費用の分担(最判S33.4.11)
日常家事債務の連帯責任(判例)
帰属不明な財産の共有推定(判例)
内縁の解消
合意解消
財産分与を請求できます。(広島高決S38.6.19)
死亡解消
相続権は認められません。死亡当事者に相続人がいない場合には、特別縁故者として相続を取得できる場合があります。
財産分与を受けることもできません。(最判H12.3.10)
生命侵害を受けた者の内縁配偶者が加害者に対して、財産的・精神的損害の賠償ができます。(最判S7.10.6)
居住権に関して判例は、相続人の賃借権を利用して、賃貸人に対し建物に居住する権利を主張することができる。(最判S42.2.21)
相続人が被相続人の内縁の配偶者に相続建物の明渡請求することが、権利の濫用として許されない。(最判S39.10.13)
※相続権はありませんが居住権は判例により保護されています。
不当破棄等
正当な理由がなく一方的に内縁関係を破棄した場合、内縁関係を不当に破棄された者は、相手方に対して婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を請求でき、さらに不法行為を理由とした損害賠償も請求できます。(最判S33.4.11)
内縁の当事者ではない者であっても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させた者は、不法行為者として損害賠償の責任を負います。(最判S38.2.1)
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婚姻の解消
協議上の離婚
第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
離婚の届出の受理
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
※離婚は結婚と違い、形式的意思説が判例・通説であり仮装行為でも離婚は認められます。(最判S38.11.28)
離婚の意思は離婚届けの作成時だけではなく、届出のときも必要になります。
協議離婚の無効
・離婚をする意思がない場合
・当事者が離婚の届出をしない場合
協議離婚の取消
・詐欺・脅迫の場合
詐欺の場合は96条は適用されないので相手方が善意の場合でも取り消せます。詐欺・脅迫が相手方から行われた場合は相手方は取り消せません。
※離婚の無効・取消は遡及効があります。離婚が無効・取消された場合に相手方が再婚していた場合は重婚の問題が発生し、後婚を取消せます。
離婚後の子の監護に関する事項の定め等
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
※監護者と親権者は同一でもなくても構いませんが、子の福祉の観点から同一が望ましく必要とあると認めらるときは別人に変更ができます。
離婚による復氏
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
財産分与
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
離婚による復氏の際の権利の承継
第七百六十九条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
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婚姻の効果
夫婦同氏
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
※婚氏といいます。
生存配偶者の復氏等
2 第七百こめ六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
同居、協力及び扶助の義務
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
成年擬制
七百五十三条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
※未成年の内に離婚しても継続します。
夫婦間の契約の取消権
第七百五十四条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
※婚姻中は単に形式的に継続しているのだけではなく、実質的に継続している必要があります。婚姻関係が破綻している場合は適用されません。(最判S42.2.2)
財産上の効果
第七百五十五条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
※財産は先ず夫婦間で決定でき、これを夫婦財産契約といいます。
対抗要件
第七百五十六条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
変更の制限
2 夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
3 共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。
財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件
第七百五十九条 前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
※婚姻関係が破綻して別居している場合でも、夫婦の協力扶助義務は別居により消滅するものではないので、夫婦の婚姻費用分担義務は消滅しません。(判例)
日常の家事に関する債務の連帯責任
第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
※前提として、夫婦相互に法定代理権が認められると解されています。(最判S.12.18)
判例
夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときに限り、110条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をすれば足りる。(最判S44.12.18)
第百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
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婚姻の無効・取消
婚姻の無効・取消し
婚姻の無効
※無効となる場合は限定されています。婚姻が無効の場合は遡及的に効力を失い、初めから婚姻関係が存在しなかったことになります。相続権もなかったことになり、子が出生しても非嫡出子になります。
無効行為の追認
判例
事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかずに婚姻届を作成提出した場合においても、当時双方に夫婦としての実質的生活関係が存在し、後に他方の配偶者がその提出の事実を知ってこれを追認したときは、婚姻は追認により届出の当初にさかのぼって有効となる(最判S47.7.25)
婚姻の取消
第七百四十三条 婚姻は、次条から第七百四十七条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
不適法な婚姻の取消し
2 第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。
不適齢者の婚姻の取消し
2 不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
第七百四十六条 第七百三十三条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。
詐欺又は強迫による婚姻の取消し
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
判例
737条違反は誤って受理された場合は有効に成立します。(最判S30.4.5)
第七百三十七条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
重婚の取消制限
後婚が離婚により解消した場合は取消はできません。(最判S.9.28)
前婚が離婚で解消された場合や重婚した前婚の配偶者が死亡して解消した場合も同様です。(通説)
ただし、重婚の当事者が死亡した場合は後婚を取り消せます。
詐欺・強迫による婚姻の取消し
2 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
※詐欺・強迫が相手方による場合と第三者による場合でも取り消せます。
96条は適用されないので、第三者による場合で相手方が善意でも取り消せます。
ただし、詐欺・強迫が相手方による場合は相手方は取り消せません。検察官、親族も取り消せません。
婚姻の取消しの効力
第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
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親族・婚姻
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身分法・親族
身分権
人が身分関係に基づき身分法上有する権利で、一身専属性が強いです。
親族の範囲
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
三 三親等内の姻族
親等
第七百二十六条 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2 傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。
※親等の数え方は、本人を中心にいくつ経由するかです。兄弟は父母を経由するので2親等。甥姪は父母と兄弟を経由するので3親等となります。
縁組による親族関係の発生
第七百二十七条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
離婚等による姻族関係の終了
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
離縁による親族関係の終了
第七百二十九条 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
第七百三十条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶 け合わなければならない。
※扶養義務です。
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不法行為・損害賠償請求
損害賠償の範囲
416条が類推適用されます。
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
※特別の事情によって生じた損害については、加害者がその事情を予見し、又は予見することができたときに限り、賠償責任を負います。(大連判T15.5.22 最判S48.6.7)
損害賠償請求権者
被害者本人
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
※法人は精神的苦痛を受けることがないので、精神的苦痛に対する請求は出来ませんが、名誉棄損がなされた場合は、法人にも精神的損害とは別の無形の損害がありうるため、その損害賠償が認められます。(最判S39.1.28)
近親者
不法行為により被害者が死亡した場合、被害者の父母・配偶者・子は財産権を侵害されなかったときでも、損害賠償請求権が認められます。
被害者が死亡しなくても、生命侵害に比肩する精神的苦痛を受けた近親者は損害を立証するれば、709条.710条に基づき慰謝料請求できます。(最判S33.8.5)
財産的損害の賠償請求権の相続
判例は、相続肯定説になります。
慰謝料請求権の相続
判例
不法行為の被害者は、損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得し、当該請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がない限り、その損害の行為をすることなく、これを行使できるものであり、被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰謝料請求権を相続するとします。(最判S42.11.1)
損害賠償の方法・過失相殺
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
損害賠償の算定
判例
交通事故の被害者の後遺障害による逸失利益の算定にあたっては、その後に別の原因で被害者が死亡したととしても、交通事故の時点で、その死亡原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない(最判H8.4.25)
交通事故の被害者が事故のため介護を要する状態となった後に、別の原因により死亡した場合、死亡後の期間に係る介護費用を交通事故のよる損害として請求できない(最判H11.12.20)
損害賠償の調整
過失相殺
722条2項参照。(加害者が免責されることはありません。)
損益相殺
判例
交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償の算定については、幼児の損害賠償請求権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても。将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではない(最判S53.10.20)
生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきではない(最判S39.9.25)
交通事故の被害者がその後に別の交通事故により死亡した場合、最初の交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、最初の事故の損害賠償額から死亡後の生活費を控除できる(最判S8.5.31)
名誉毀損における原状回復
第七百二十三条 他人の名誉を毀 損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
※謝罪広告がこれに当たります。
消滅時効
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
判例
3年は消滅時効、20年は除斥期間である(最判H元.12.21)
被害者が損害を知ったときとは、被害者が損害の発生を現実に認識したときをいう(最判H14.1.29)
724条後段所定の除斥期間が、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害かが発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生したときから進行する(最判H16.4.27 最判H18.6.16)
被害者を殺害した加害者が、その相続人が被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため、相続人がその事実を知ることができず、相続人が確定しないまま殺害のときから20年が経過した場合に、その相続人が確定したときから6ヶ月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときには、不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅しない(最判H21.4.28)
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不法行為
意義・趣旨
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
成立要件
・加害者に故意又は過失があること(過失責任の原則)
・権利又は法律上保護される利益の侵害(違法性)
・損害の発生
・行為と損害の間の因果関係
※立証責任は被害者が負います。
財産以外の損害の賠償
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
※財産以外の損害とは精神的損害で一般的に慰謝料と言われているものです。
近親者に対する損害の賠償
第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
責任能力
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第七百十三条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
責任無能力者の監督義務者等の責任
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
使用者等の責任
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
注文者の責任
第七百十六条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
土地の工作物等の占有者及び所有者の責任
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる
動物の占有者等の責任
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
共同不法行為者の責任
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇 助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
※不貞行為は配偶者と浮気相手と二人いる為、共同不法行為となります。
正当防衛及び緊急避難
第七百二十条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
失火の責任に関する法律
失火の場合に、加害者は重過失がなければ不法行為責任を負いません。
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不当利得
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
※判例は受益と損失の因果関係は、社会通念上の連結があればよいとされています。
悪意の受益者の返還義務等
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
※悪意又は重過失がある場合は、損失者との関係で法律上の原因がないとされます。(最判S49.9.26)
債務の不存在を知ってした弁済
第七百五条 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
期限前の弁済
第七百六条 債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
他人の債務の弁済
2 前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
不法原因給付
※不法とは公序良俗違反を指し、不法原因給付は、不法な行為を染めた者は、法的救済を求めることができないというクリーンハンズの原則に基づいています。
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