抵当権・3
抵当不動産の第三取得者
代価弁済
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
※地上権を買い受けたときは相対的に消滅します。抵当権自体は消滅しません。(抵当不動産の競売も出来ます。)
抵当権消滅請求
抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。
※所有権以外の権利を取得したも者は行使できません。無償での取得でも可能です。
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。
方法
抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
一 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
二 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
三 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。
抵当権者のみなし承諾
次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。
賃借権に対する効力
競売された不動産の賃借権は消滅しますが、次の要件を満たすことにより対抗できるようになります。
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
明渡猶予制度
抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。
法定地上権
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
成立要件
・抵当権設定当時、土地の上に建物が存在
・抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者
・土地と建物の一方(双方)に抵当権が存在
・競売の結果、土地と建物が異なる所有者に帰属
土地が共有の場合
土地共有者1人についてのみ法定地上権の成立要件を満たしても、原則として成立しません。
※共有者が法定地上権の発生をあらかじめ容認していたような場合は成立します。
建物が共有の場合
共有者の1人についてのみ法定地上権の成立要件を満たせば、原則的に成立します。
抵当権の実行 競売
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
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抵当権・2
被担保債権の範囲
担保される利息の範囲
抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
目的物の範囲
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
※従物が抵当権設定当時宅地の常用のためにこれに付属させられたものであるときは、この従物たる物権にも及びます。(最判S44.3.28)
特段の事情がない限り賃借権にも及びます。(最判S40.5.4)
果実の対する効力
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
※原則として及びません。
物上代位の目的物
・売却代金
304条の規定を準用します。
目的物の売却代金にも物上代位権を行使できるとするのが通説です。
・賃料
抵当不動産の賃料債権に対する物上代位権の行使は認められています。(最判H10.27)
ですが、転貸賃料債権については認められていません。(最判H12.4.14)
・抵当不動産の保険金請求権
認められています。(大連判T12.4.7)
抵当権の順位
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
抵当権の順位変更
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
※利害関係を有する者とは順位変更により、不利益を受ける者です。(転抵当権者等です。利益を受ける者と抵当権設定者の承諾は必要ありません。)
抵当権の処分
抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
種類
・転抵当
抵当権者が抵当権を他の債権の担保にすることです。原抵当権と転抵当権、双方の弁済期が到来していれば目的不動産の競売ができます。
・抵当権の譲渡
譲渡を行った場合、受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。(譲渡人の配当額の分で振り分けられます。抵当権自体が移転するのではなく、弁済優先権が移転します。)
・抵当権の放棄
同一の債権の債権者に対して、無担保の一般債権者に対する関係で放棄することです。放棄した抵当権者の本来の配当額の内で債権額の割合に応じて、受益者と振り分けられます。(抵当権者の配当額が600万で受益者の債権が400万の場合、3:2で振り分けられ、抵当権者が360万、受益者が240万となります。)
・抵当権の順位の譲渡
自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に取得させることです。受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。
・抵当権に順位の放棄
自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に対する関係で放棄することです。配当額は抵当権の放棄と同一です。
対抗要件
前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
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抵当権
債務者または第三者(物上保証人)が提供した不動産につき、その占有を担保提供者(設定者)のもとにとどめたまま設定される約定担保物権です。
性質・効力
物権性
目的物の滅失、権利の放棄、混同により消滅します。
担保物権性
付従性、随伴性、不可分性、物上代位性、優先的弁済効力を有します。
保証人が主債務者に対して将来取得すべき求償債権を担保するために、抵当権を設定できます。(最判S33.5.9)
抵当権の設定
目的物
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
※所有権の一部や共有持ち分の一部のみの抵当権の設定はできません。
被担保債権
種類
・非金銭債権を担保するための抵当権の設定。
・1個の債権の一部についてのみ抵当権の設定。
(300万円の債権の内、100万円のみ抵当権の設定を行うことも可能です。)
・複数の債権を一括して担保する抵当権の設定。
(債権者が同一で債務者が異なる場合は可能です。)
抵当権設定契約
抵当権者(債権者)と抵当権設定者との間に締結されます。
抵当権者は債権者ですが、抵当権設定者が債務者以外の第三者(物上保証人)でも可能です。
対抗要件
登記になります。
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転質
質権者が質物をさらに他人に質入れをすることを転質といいます。この場合、最初の質権設定者を原質権設定者となり、転質者を原質権者といいます。
責任転質
質権者が自己の責任をもって転質することです。
成立要件
・要物契約性
当事者の合意と目的物の引渡です。
・被担保債権額
原質権の被担保債権の額が転質権の被担保債権の額を超過する場合は、転質権はその被担保債権全部を担保するものとして成立し、競売された場合には、売却代金から債権額全額について優先弁済を受けることができます。(残金は原質権者に配当されます。)
転質権の被担保債権の額が原質権の被担保債権の額を超過する場合は、原質権の被担保債権の額の分までしか担保されません。
原質権者の責任
不可抗力であっても原質権者はそのすべての賠償の責任を負わなければいけません。
転質権の実行
転質権の実行には、原質権の被担保債権の弁済期も到来していなければなりません。
※原質権の被担保債権の弁済期が転質権の被担保債権の弁済期よりも先に到来した場合、原質権設定者を弁済金額を供託させることができ、以後はその供託金返還請求権の上に優先弁済権を有します。
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質権各論
動産質
成立要件
引渡によって成立しましす。
対抗要件
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
※第三者に引渡た場合、質権自体は消滅しませんが、第三者に対抗出来なくなります。(大判T5.12.25.)
質物の占有回復
動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
簡易な弁済充当
動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
動産質の順位
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
※指示による占有移転の方法でも動産質が認められるため、同一の動産について複数の者に質権が設定出来ます。
不動産質
成立要件・対抗要件
当事者間の質権設定の合意と目的不動産を債権者に引き渡すことで成立します。
第三者への対抗要件は登記になります。
使用収益・管理費用の負担
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
利息請求権
不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
存続期間の制限
不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。
2 不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。
債権質
債権質の設定
当事者間の質権設定の合意だけで成立します。債権証書を債権者に交付する必要があります。
債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。
目的債権
指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
対抗要件
指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
質権者による債権の直接の取り立て
質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。
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質権
意義
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
要件
目的
質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
質権設定契約
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
簡易の引渡、指図による占有移転も含まれます。占有改定は質権の成立要件に含まれません。
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
※動産の持ち主でないの者(処分権限がない者)が勝手に質権を設定した場合でも、目的物が動産で、債権者が善意かつ無過失でその者に処分権限があると信頼して目的物を受け取った場合、即時取得により質権が有効に成立します。(大判S7.2.23)
被担保債権の範囲
質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
性質・効力
被担保債権の消滅時効
賃金債権の消滅時効は進行します。
流質契約の禁止
質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
例外
・特約(流質契約)の履行が質権設定者の意思にゆだねられてる場合(大判M37.4.5)
・弁済期後にする場合
物上保証人の求償権
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
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先取特権・2
順位
一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
一般の先取特権相互間の順位
1・共益費用
2・雇用関係
3・葬式費用
4・日用品供給
動産の先取特権の順位
同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
3 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。
不動産の先取特権の順位
第三百三十一条
同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
2 同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
※登記の先後は関係ありません。
同一順位の先取特権者の優先弁済権
同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
特別な効力
第三取得者との関係
第三百三十三条
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
※この引渡には占有改定も含まれます。(大判T6.7.26)(賃借権や質権者は含まれません。)
動産質権との順位の関係
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
※動産質権者が先取特権者を知っていた場合、動産質権者は優先権を行使できません。(330条2項)
一般の先取特権の効力
一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
2 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
3 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
4 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
登記のない一般の先取特権の対抗力
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
※一般の先取特権も登記はでき、民法177条により、登記した第三者に対抗できますが、不動産の保存・工事の先取特権には劣後します。
不動産保存・工事に先取特権の抵当権に対する優先力
不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
※不動産売買の先取特権に関しては、特に定めがないため、原則どおり登記の先後に優先します。
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先取特権
民法上特に保護する必要性の高い債権を、他の債権に優先して弁済を受ける権利です。
法廷担保物権です。
付従性、随伴性、不可分性、物上代位性、優先的弁済効力を有します。(留置権、収益的効力を認められません。)
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
種類
一般の先取特権
債務者の財産の上に成立します。
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
葬式費用の先取特権
日用品供給の先取特権
日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
動産の先取特権
債務者の特定の財産の上に成立します。
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
不動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
不動産工事の先取特権
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない
不動産売買の先取特権
不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
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留置権
要件
債権者が他人の物(動産・不動産)を占有していること。(他の第三者の所有物を含みます。)
その物に関して生じた債権を有していること。(債権と物の牽連性)
物権性
留置権は目的物が不動産でも登記はできず、登記がなくても第三者に対抗できます。目的不動産が第三者に売り渡された場合でも、留置権は継続します。(最判S47.11.16)
担保物権性
付従性・随伴性・不可分性・留置的効力を有します。
物上代位性や優先弁済を受ける効力はありません。(留置物の競売は認められています。(形式的競売・民事執行法195条))
効力
引換給付判決
債務者が留置物の返還を求めて訴訟を提起した場合、この訴訟において債権者が抗弁として留置権を主張したとき、裁判所は債務者の返還請求を棄却することなく、債権者に対して、債務者から被担保債権の弁済を受けるのと引換に、留置物の引渡を命じる判決(引換給付判決)をなすべきであるとされています。(最判S33.3.13)
果実収取権
※法廷果実も含まれます。(判例)
留置物の保管義務
※当然に消滅するわけではありません。
留置権者の費用償還請求権
※この必要費の返還を受けるまで留置権は行使できます。(最判S33.1.17)
留置権の消滅
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担保物件
種類
留置権・先取特権(法廷担保物件(法律上当然に成立する。))
質権・抵当権(約定担保物件(当事者の約定(契約)によって成立する。))
付従性
被担保債権が成立しなければ担保物件も成立せず、被担保債権が消滅するとその担保債権も消滅します。
随伴性
被担保債権が他人に譲渡されると、担保物権もそれに伴い移転します。
不可分性
担保権者は、被担保債権の全部が弁済されるまで、目的物の全部についてその権利を行使できます。
物上代位性
担保権者は、目的物の売却・減失・損傷などにより、債務者が受ける金銭その他の物に対して権利を行使できます。
担保物権のうち目的物の交換価値を把握して、それから優先弁済を受けることを内容とするもの(先取特権・質権・抵当権)が有する性質です。
優先弁済的効力
被担保債権が任意に弁済されない場合に、担保目的物から他の債権者に優先して弁済をうけることができる効力です。(先取特権・質権・抵当権が有します。)
留置的効力
担保権者が、債務の弁済を受けるまで目的物の占有を継続することによって、間接的に債権の弁済を強制できる効力です。(留置権と質権が有します。)
収益的効力
担保権者が目的物を使用収益できる効力です。(原則として不動産質権のみが有します。)
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