取得時効と登記
時効完成前の第三者
AはBが所有する土地の占有を行いましたが、Aの取得時効完成前にBがCに土地を売り渡し、その後、Aの取得時効が完成した場合。
時効完成前の第三者に対して、自己の所有権を登記なくして主張出来る。(大判T7.3.2 最判S41.11.22)
時効完成後の第三者
AはBが所有する土地の占有を行い取得時効を完成した。その後、BがCに土地を売り渡した場合。
Aは登記なくしてCに自己の所有権を主張出来ない。(最判S33.8.28)
(Aは取得時効が完成したのに、登記を怠っていたので仕方ないとする対抗要件主義)
※Cが背信的悪意者の場合は登記なくしてもAは自己の所有権を主張出来る。
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登記を対抗要件とする物件変動
相続と登記
八百九十六条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
被相続人から生前譲渡された第三者との関係
売主が買主Aに売買契約した後死亡し、売主から相続した相続人が被相続人と買主Aとの売買を知らずに買主Bに売り渡した場合、買主Aと買主Bは対抗関係に立ちます。(大連畔T15.02.01)
※登記が済んでいる場合は登記が優先されるので、対抗関係に立てません。
共同相続と登記
被相続人が死亡し、相続人AとBが共同相続したときBが単独で相続した土地を登記しCに売渡した場合、Aは登記がなくてもCに対抗できます。Bの登記は無権利だからです。
※Aに帰属性が認められれば、Cは保護される可能性もあります。
※Bの持分は取得できます。
相続の放棄と登記
被相続人が死亡し、相続人AとBが共同相続したとき、Bが相続を放棄したが、Bの債権者がABで共同で相続した登記をして、Bの持分を差押場合は、
Bの債権者の差押は無効になります。相続の放棄の効力はは絶対的で、何人に対しても、登記なくして主張できます。(最判S42.01.20)
※Aは単独の相続人であることを主張できます。
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不動産物件変動
第百七十七条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
第三者
当事者及びその包括承継人以外の者。
「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」(大判例M41.12.15)
・物件を取得した者
・不動産を差し押さえた第三者、仮差押をした第三者(判例)
・賃借人
(賃貸人は対抗するためにも登記が必要(判例・多数説))
第三者に当たらない者
・無権利者
・不法行為者・不法占拠者(判例)
背信的悪意者排除説(現在の判例・通説)
背信的悪意者は第三者に当たりません。
信義則に反するような悪意者は保護に値しません。
背信的悪意者からの転得者
判例 転得者が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されない限り、第一買主は登記がなければ対抗できない。(最判H8.10.29)
転得者が背信的悪意者
判例 第一買主との関係で背信的悪意者と評価されれば、第三者にあたらない。
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物件変動
物件の発生
原子取得と承継取得があります。
物件の変更
物件の性質を変えない範囲で物件の容体・内容に変更を加えることです。
物件の消滅
目的物の減失
放棄
※第三者を害することは出来ません。
消滅時効
混同
※相対立する2つの法律的地位が同一人物に帰属することです。
例
抵当権者が抵当権設定者の土地を取得する場合等
混同により消滅しない場合
抵当権者が抵当権設定者の土地を取得した場合でも、後順位抵当権者がいる場合は消滅しない。
同一人物につき所有権及び他の物件が同一人物に帰属した場合であっても、物件が第三者の権利目的であるときは、混同によって消滅しません。
所有権以外を目的とする場合
物権の設定及び移転
当事者の意思表示のみよってその効力を生じます。これを物件変動による意思主義といいます。
第百七十六条
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
移転の時期
特約のない限り、契約と同時に移転します。(最判S33.6.20)
物件変動が生じるための客観的な要件が満たされていない場合は、その要件が満たされたとき移転します。
対抗要件主義
第三者に対抗するためには、原則として、不動産の場合登記、動産の場合引渡といった公示方法が必要となります。
百七十七条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
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時効の効果・援用・放棄
時効の遡及効
時効の効力は起算日にさかのぼります。
時効を援用するものが勝手にその起算日を変更出来ない。(最判S35.07.27)
第百四十四条
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
時効の援用
時効の利益を受けるの者が、時効の利益を受ける旨の意思表示をすること。
第百四十五条
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
援用権者
時効の当事者=時効により直接利益を受ける者(大判M43.01.25)
(保証人・連帯保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者・詐害行為の受益者)
援用の効果の相対性
援用権者が複数いる場合、そのうち1人が援用しても、その効果は他の援用者に及びません。(相対性)
時効利益の放棄
時効完成前には時効の放棄は出来ません。
第百四十六条
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
※時効の完成を困難にする特約等は認められない。
効果・方法
援用権者が複数いる場合、そのうち1人が援用しても、その効果は他の援用者に及びません。(相対性)
時効完成後の自認行為
時効の完成を知らずに債務を承認した場合。
信義則上消滅時効を援用することは許されない(時効援用の喪失 最判S41.04.20)
時効の中断
時効期間の進行を中断し、それまでの進行期間を無に帰します。
第百四十七条
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
請求
第百四十九条
裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
中断の効果
新たな時効期間の進行
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民法を学ぼう 消滅時効
対象権利
・債権
・用益物権(地上権や地役権等)
・担保物件(単独でかかりません。)
非対象権利
・所有権
・占有権、留置権、相隣関係の権利、共有物分割請求権
(一定の事実状態、法律状態があれば認められる権利は消滅時効にかかりません。)
要件
権利の不行使
権利を行使できるのにもかかわらず、一定期間権利を行使しないことです。
消滅時効の起算点
確定期限付き債権 期限の到来したとき
不確定期限付き債権 期限の到来したとき
期限の定めのない債権 債権の成立・発生時(原則)
返還期限の定めのない消費賃借 催告があるときは催告後、相当期間が経過したとき 催告がないときは契約、債権成立から相当期間経過時
債務不履行に基づく損害賠償請求権 本来の債務の履行を請求できるとき
不法行為に基づく損害賠償請求権 被害者または法廷代理人が損害及び加害者を知ったとき(3年)
一定期間の経過
債権 10年間
債権・所有権以外の財産 20年間
定期給付債権 5年間
短期消滅時効にかかる債権であっても、確定判決等によって確定した債権 10年間
第百七十三条
次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
第百七十四条
次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
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民法を学ぼう 取得時効
取得時効
対象権利
所有権
百六十二条
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
用益物権
地上権・永小作権・継続的に行使され外形上認識できる地役権
第百六十三条
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
所有権の取得時効の要件
所有の意思をもってする占有
自主占有・自分が所有者であるという意思をもってする占有。
他主占有・所有の意思を持たずにする占有。
所有の意思の有無は占有取得原因の客観的性質により決まります。(最判S45.6.18)
直接占有または間接占有でも構いません。
占有の性質の変更も可能です。
第百八十五条
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
平穏・公然
平穏とは暴力等によらないこと、公然とは秘匿しないことです。
他人の物
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
一定期間の占有
第百八十六条
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
占有開始時に自己に所有権があると信じることにたいし、善意・無過失であれば10年間(短期取得時効)、それ以外の場合は20年間で取得時効が成立します。
善意・無過失は占有開始時であれば足ります。(後に悪意、有過失になっても適用します。)
占有は継承可能です。
第百八十七条
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民法を学ぼう 時効
時効
一定期間継続した事実を尊重し、それに即した権利変動を生じさせる制度です。
取得時効
一定期間の占有によって権利を取得する。
消滅時効
一定期間の権利不行使によって権利が消滅する。
時効制度の意義
長時間継続する事実状態を尊重することにより、その事実を前提とした社会秩序・法律関係に維持を図る。
長時間の経過により、証拠の保全が困難になることに対する救済を図る。
権利の上に眠る者は保護しない。
権利失効の原則
権利の行使は信義誠実にこれをなさなければならず、長期間権利を行使しなかったため、相手にもはやその権利が行使されないと正当な信頼を抱かせた場合には、もはやその権利の行使は許されないとする。
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民法を学ぼう 期限と期間
期限
法律行為の効力の発生・消滅又は債務の履行を、将来必ず到来する事実の発生にかからしめることです。
期限は、始期、終期、確定期限、不確定期限とに分類されます。
期限の利益
期限の利益とは、期限の到来しないことにより当事者の受ける利益のことです。
(例えば、金銭を借りた場合、返済の期日まで返済しないでいいという利益です。)
期限の利益の放棄
債務者と債権者の双方が期限利益を享受している場合、債務者は(または債権者)は債権者の喪失する利益をてん補すれば、期限の利益を放棄を出来ます。
期限の利益の喪失
第百三十七条
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
期間の計算
起算点
満了点
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民法を学ぼう 条件
条件
条件とは違法行為の発生又は消滅を、将来の不確定な事実の成否にかからしめることです。
停止条件
条件の成就により法律行為の効力が発生する。
解除条件
条件の成就により法律行為が停止する。
条件を付けることのできない法律行為
公益上
公序良俗または強行法規に反するもの。
(婚姻、認知、養子縁組、相続放棄、承認等の身分行為)
私益上
相手方が不利益になる行為。
(相殺、解除、取消、買戻し、選択債権等)
※相手方の同意がある場合や、停止条件付債務の免除のように、相手方不利益を得なければ可能です。
条件の種類
不法条件
条件となる事実の内容を不法行為を行うこと、又はしないこと。
第百三十二条
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
不能条件
第百三十三条
不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
純粋随意条件
第百三十四条
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
※債権者の意志のみにかかるとき、及び解除条件は純粋随意条件であるときは有効。
条件付権利
意義
条件が付された法律行為の当事者の一方は、条件が成就すれば利益を受けることができるという期待感を有します。
百二十八条
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
第百二十九条
条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
条件成就の妨害
百三十条
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
※妨害により不成就になったこと、すなわち妨害がなければ成就したであろうという蓋然性が必要です。(判例)
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