不貞慰謝料請求の判例 case.5
不貞慰謝料請求をするにあたってやはり気になるのが、慰謝料算定の考慮事情。
一言に慰謝料と言っても、環境や、条件によって金額が変化するもの。一体どういった算定で金額を決定するのか。
弁護士に対するアンケート結果では、資産・収入・職業・地位などは、算定要素となると考えている弁護士が多いようである。
しかしながら、近時の裁判例では、こういった要素を慰謝料算定の考慮事情に直接入れないことが多い。
これはむしろ当然の事であって、例えば、社会的地位のある者とそうでない者が行う不貞行為には何ら差異はないはずであり、また所有資産の有無という事実自体によって慰謝料の額が増えたり減ったりするということに合理性があるとは思えないからである。
この点に関して、東京地方裁判所(平成23年12月28日)も、「当事者に関する一般的事情は不法行為により生じた精神的苦痛とは無関係であるから、慰謝料額の算定において考慮することは出来ない」と判示している。
ただし、先程も述べたように、資産・収入・職業・地位などは、算定要素となると考えている弁護士が多いのも確かなので、当事者の職業が慰謝料の増額事由として考慮されたと思われる裁判例もある。
~探偵の一言~
今回は、慰謝料算定の考慮事情についてでした。
「不倫相手が金持ちだったら慰謝料を多く請求できる?」そんな疑問に答えるような内容だったと思います。
逆に言えば「借金だらけの人からは慰謝料請求できない?」となってしまいますので、上記で述べたように、やはり合理性があるとは言えないのでしょうか。
しかし、あくまでこれは裁判まで話が進んだ場合の例です。
弊社では、裁判で勝てる証拠を入手します。そうすることで、裁判までいかずとも、示談交渉で決着がつきます。
示談交渉では、当事者の資産・収入・職業・地位は算定要素となると考えてもいいのではないでしょうか。
不貞慰謝料請求の判例 case.4
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「面会行為」いわゆる、ランチやお茶などと言った行為は、不貞行為(不法行為)となるか、争われたケースがある。
妻が夫に内緒で、男と会ったり、メールのやり取りをしていた行為を違法な交際だと主張して争ったのだ。(東京地方裁判所平成20年12月4日)
しかしながら、同裁判例は「これらの行為が不法行為を構成するとは言えない」としている。
つまり、妻が週に2.3回、異性と昼間に会っては会食し、週に3回は夕食を共にしたほか、映画鑑賞、喫茶などを繰り返しても、これらは、婚姻関係を破たんに至らせる交流とは認めがたく、不法行為に当たらない。としている。
ただし、事案によっては、面会行為が不法行為に当たるケースもある。
それが、東京地方裁判所平成25年4月19日の裁判例で、かつて不倫関係にあった2人が深夜の時間帯に面会行為をしていたというものであった。
裁判所は「深夜の時間帯に面会行為を行う事は、再び不倫関係を再開したと疑いを抱かせるのに十分であり、婚姻関係を破たんに至らせる行為であると認められる」と判示した。
このように、単なる面会行為でも、不法行為を構成する可能性がありうる。(参考:不貞慰謝料請求の実務 著者 中里和伸弁護士)
~探偵の一言~
今回のcase.4は面会行為が不貞になるか、というものでした。
不法行為=肉体関係というのは周知だと思いますが、面会行為のみでも不貞になる可能性があるのですね。
幾つかの条件が重なれば、の話ですが、、、。
かつて浮気・不倫をしていたパートナーが、十数年経ったのち以前と同じ相手と不倫(または深夜の面会)を再開する、というケースは実際にあります。
十数年前の不倫でも、再び不倫関係を再開したと疑いを抱かせ、婚姻関係が破たんすれば、十分に慰謝料請求が認められる可能性はあるようです。
不貞慰謝料請求の判例 case.3
平成8年3月26日、最高裁判所が不貞慰謝料請求訴訟に関する重要な判決を下した。
その判決を簡潔に言うならば『婚姻関係が破たん状態であれば不貞の償いは無用』といった内容である。
仮に訴訟を起こしたのが妻・あゆみで、不倫をしたのが夫・つばさだとしよう。
要するに、つばさと不倫相手との不貞行為が開始された時点に於いて、あゆみとつばさの夫婦関係が破たん状態にあるのならば、原則として、つばさはあゆみに対して不法行為責任を負わず、あゆみのつばさに対しての慰謝料請求は認められないと判示したのである。
夫婦関係がもとより壊れていたのであれば、「すでに壊れていたものをさらに壊すことはできない」ので、不法行為責任を負わないという事である。(参考:不貞慰謝料請求の実務 著者 中里和伸弁護士)
~探偵の一言~
今回のcase.3は、夫婦関係の破たんについてでした。
不倫された側が全員が全員、慰謝料請求は出来ないという事が判例としてあります。
夫婦関係の破たんとは、一般的に別居=破たんと思いがちですが、それは違います。
別居状態でも、「夫婦関係改善のための別居」も存在するため、別居=破たんとはならないようです。
では、どういった事が夫婦関係の破たんになるか。
それは、双方が関係が壊れている事を認めた場合になります。
お互いに不倫している、だとか
提出してはいないが自分らの意思で書いた離婚届が存在する、
等が例としてあります。
もし、今、浮気をされて苦しんでいる方がいたら、相手がいつ離婚届を渡してくるか、考えている人もいるでしょう。
そういった状況でも、すぐ受け入れるのではなく、もう一度夫婦仲を改善するよう提案してみて下さい。
その状態で、不貞の証拠を入手すれば、裁判所が不貞行為と推認する可能性は十分にあります。
こういった情報をあらかじめ知っておくことで、浮気・不倫された側ばかりが泣き寝入りする状態を避ける事が出来るでしょう。
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民法を学ぼう 表見代理
表見代理とは
代理権を持たない者が代理行為をした場合に、本人と無権代理人との間に特殊な関係にあるために、その無権代理行為を代理権がある行為と同様に扱い、本人に対し効果を帰属させる制度。
※無権代理行為は原則として本人に対して効力を生じません。しかし、代理権が存在するかのような外観があり、その外観の形成につき本人に責任がある場合には、その外観うを信頼した者を保護し取引の安全を図ります。
効果
本人は有効な代理行為がされたの場合と同一の責任を負います。
百九条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
無権代理との関係
表見代理も無権代理の一種なので、無権代理に関する追認、催告、取り消し規定(民法113条~116条)の適用があります。
相手方の保護
相手方の保護を重視し、表見代理と無権代理人責任との二重効を認め、相手方は選択的に追及できるとしてます。
種類
代理権授与の表示による表見代理
第百九条
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
権限外の行為の表見代理
第百十条
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
代理権消滅後の表見代理
第百十二条
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない
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不貞慰謝料請求の判例 case.2
不貞行為をはじめとして、離婚の事由、原因は様々でありこの『何が離婚自由にあたるのか』という問題に関する裁判例も多数ある。
では不貞行為をしていなくても、離婚自由にあたる行為にはどんなものがあるのだろうか。
東京地方裁判所 平成24年11月28日判 ~武史(仮名)の場合~
武史は妻がいる平凡なサラリーマン。しかし不倫をしている。
不倫相手とは、メールでやりとりをしており(妻にみられる可能性がある)、『好きだよ』や『愛しているよ』などといった愛情表現を含む内容を送っていた。
直接肉体関係を持っている確証はないが、このような、愛情表現を含む内容のメールをやりとりした場合、その行為が不貞行為、すなわち不法行為になるのか。その点で争われた事例が武史のケースである。
これについて東京地方裁判所はこう解釈した。
『このようなメールは、性交渉の存在自体を直接確認するものではないものの、武史が不倫相手に好意を持っており、妻が知らないまま不倫相手と会っていることを想像させるばかりか、武史と不倫相手が身体的な接触を持っているような印象を与えるものであり、これを妻が読んだ場合、今後の婚姻生活の平穏を害するようなものというべきである』
として、不法行為の成立を認めた。
ただし、その行為の違法性は軽微と判断し、慰謝料は30万円と低額であった。(請求額は500万円)
これに対して、これと逆の結論をとった裁判例もある。
東京地方裁判所 平成25年3月15日判
この事例も武史と同様、メールでのやり取りが不法行為にあたるかという点で争われた。
東京地方裁判所は次のように解釈した。
『確かに性交類似行為にはなり得、損害賠償請求権を発生させる余地がないとは言えない。しかし、私的なメールのやり取りは、たとえ夫婦間であっても発受信者以外の目に触れる事を想定しないものであり、性的なメールのやり取りに関する損害賠償請求は、配偶者、及び相手方のプライバシーを暴くものである。メールの内容だけでは不倫相手が夫婦関係を破綻させようと意図した形跡は見られない。よって損害賠償請求は正当化できず、不法行為の成立を認める事は出来ない。』
として、不法行為とは認めなかった。
このようにメールのやりとりなど曖昧な証拠では、下級審において結論が分かれている。
(参考:不貞慰謝料請求の実務 著者 中里和伸弁護士)
~探偵の一言~
今回のcase.2はメールに関する事例でした。
今の時代に於いて、メールは誰でも作成することができ、削除も容易です。
誰かになりすましてやりとりすることも可能です。
更に、今ではたとえ夫婦間でもプライバシーの侵害に当たる可能性もあります。
このような理由から、物的証拠としての能力は低く、裁判所でも見解が分かれるのではないでしょうか。
裁判で勝つためには『勝てる証拠』を持っていることが必要です。
メールだけでは、その『勝てる証拠』に至らないでしょう。
では、どういったものが『勝てる証拠』なのか。
不法行為者達が不法行為を行ったと裁判所が推認できる証拠です。
不貞であればホテルに入る画像や動画。ホテルから出てくる画像や動画。
その前後の行動も全て含め、絶対に言い逃れ出来ない証拠。
case.2に関しても、メールを見た段階で、メール以外の証拠を入手することに考えが回っていれば、請求額を受け取れたり、不法行為を認めさせることができたでしょう。
浮気されている、と感じたらまずは状況を把握し、戦うにしろ浮気を辞めさせるにしろ、まずは誰かに相談することをお勧めします。探偵でもいいですし、お友達でも結構です。一人で悩むより確実にいい答えが出るはずです。
不貞慰謝料請求の判例 case.1
平成8年6月18日、最高裁判所第三小法廷判例
太郎(仮名)と花子(仮名)は昭和59年1月に婚姻届を出した夫婦である。同年5月に長女、約2年後には長男が出生した。
友美(仮名)は昭和45年11月に結婚し、約1年後に長女を出生。しかし昭和61年4月に離婚をする。
友美は昭和60年10月から居酒屋の営業をして生計を立て、62年5月頃、元夫から長女を引き取り養育を始めた。
約1年半後、太郎は初めて客として友美の居酒屋に来店。週1程度通うようになるも、平成元年10月頃から約1年半、来店しなくなった。
この間、太郎は上記居酒屋の2階にあるスナックのホステスと半同棲の生活をしていた。
太郎が居酒屋に来店しなくなったころから花子が来店するようになり、太郎の女性問題など夫婦関係について愚痴をこぼすようになっていた。
「太郎とは時期をみて離婚する」とまで話していた。
平成2年9月頃、再び太郎が来店するようになり、友美を口説くようになった。
「本気に考えているのはお前だけ。妻とは別れる」
と毎日のように口説かれた上、病気持ちだった友美は徐々に太郎に惹かれ始める。
「妻とは別れる。お前の責任だと思う事はない。病気も一緒に治していこう」
友美はその言葉を信じ、太郎と肉体関係を持った。
平成2年10月頃から友美は太郎と結婚することを決心し、結婚生活の準備をし始めた。太郎の希望で土地建物を売却し、長女と新居を探していた。
一方太郎は、花子と離婚についての話し合いなどを全く進めていなかった。
同年12月、花子に太郎と友美の関係が発覚。
友美は花子に、「太郎は花子と離婚して自分と結婚をする約束をしている」と説明。
しかし、花子は友美に対して、不貞行為による慰謝料として500万円を請求。
その際、「500万さえ払えば太郎はあげる。太郎にかかればあなたをひっかけるのはたやすいわ」
などと言われ、友美は太郎に騙されていた、と感じた。
花子は太郎・友美両者に慰謝料請求。
太郎は好きにしろとの態度をとり友美は終始沈黙していた。
後日、友美の店に太郎が来店。花子に500万円を支払うよう要求。
拒否すると太郎は友美に暴行を加えた。
また後日、今度は花子が来店し、他の客の前で慰謝料について怒鳴り散らすなどの嫌がらせ行為を行った。
太郎と二人で嫌がらせ行為に及ぶ日もあった。
行為はエスカレートし、太郎は傷害罪で5万円の罰金刑に処された。
平成3年1月、花子は友美に対し不貞慰謝料請求訴訟を提起。
一審(奈良地方裁判所)は花子の請求を棄却したが原審(大阪高等裁判所)は、
「友美が太郎に妻がいる事を知りながら肉体関係を持ったこと」
「太郎と花子の婚姻関係は破綻していなかったこと」
を理由に、100万円の慰謝料を認めた。
これを受け、友美は上告。
結果、最高裁判所は、「花子が友美に、なにがしの損害賠償請求権を有するとしても、正当な範囲を逸脱し、正当な権利の行使とは認められない状態である」と判示し、請求を認めなかった。
別件として、友美は太郎に損害賠償請求訴訟を提起。
平成6年2月に200万円と遅延損害金の判決が出され200万円を毎月2万円ずつ支払う事などを内容とする和解が成立した。
(参考資料:「不貞慰謝料請求の実務」著者 中里和伸弁護士)
~探偵の一言~
今回のcase.1は特例です。
今回のcase.1で大事な所は
「いかに悪質な美人局でも不倫は不法行為に当たること」
「太郎と花子の2人が、大勢の前で嫌がらせをしたり傷害罪で罰を受けたこと」です。
友美が不法行為を犯しながら、花子の請求を認めさせず、太郎に損害賠償請求が出来たのは、
2人が大勢の前で嫌がらせをしたり、太郎が傷害罪で罰を受けたこと、という、証拠があったからです。
明らかに2人が結託していると認めざるを得ない証拠があったからこその、今回の結果です。
この証拠がなければ、友美は泣き寝入りしていた可能性もあるのです。
圧倒的不利な状況でも、証拠さえあれば戦う事が出来ます。
今回も本当であれば、「太郎が本当に花子と別れているのか」、その証拠を持っていれば、ここまで大事にはならなったでしょう。
友美のcase.1は特例ですが、通常、当事者本人が証拠を入手するのはかなり難しいことです。
その際はやはり、探偵などに依頼する事をお勧めいたします。
下手に動き、相手にバレ、事実を隠されるという事案もあります。
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無権代理と相続
無権代理人が本人を相続した場合
判例
本人と代理人との資格が同一になった場合、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位をを生じたものと解し、本人として追認を拒絶することは許されない。(資格融合説・最判S40.6.18)
共同相続の場合
無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されませんが、他の相続人が拒絶するこは許されます。
判例
他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効にならない。(最判H5.01.21.)
逆に他の相続人全員が追認していれば、無権代理人は追認を拒絶できません。
本人が無権代理人を相続した場合
追認拒絶は可能です。(最判S37.04.20)
ただし、無権代理人の責任も相続します。
(履行又は損害賠償の債務の相
本人と無権代理人双方を相続した場合
(Bが無権代理行為を行い、Bが死亡し本人AとCが相続し、さらにAも死亡し、Cが相続した場合)
資格融合説に基づき、追認は拒絶できません。(最判S63.03.01)
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民法を学ぼう 無権代理
無権代理
無権代理とは代理権を有しない者が他人の代理人として法律行為を行うことです。
この際、代理権授与以外の代理権一般の要件を満たすことが必要です。
無権代理は原則として本人に効果を生じませんが、本人にとって有利な契約もある為、追認によって効果を本人に帰属させることも可能です。
だたし、第三者の権利を害することは出来ません。
相手方の保護
催告権があります。相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうか催告出来ます。その期間内に返答がなされなかった場合、拒絶したものとみなされます。
この催告は、行為当時、代理人に代理権がない事を知っていたときも出来ます。
第百十四条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
取消権
第百十五条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
無権代理人の責任追及
本人が追認を拒絶した場合等、無権代理人に責任追及ができます。
これは、無過失責任となります。
要件
代理人が代理権を証明できないこと。
(証明出来れば有権代理人です)
本人が追認しないこと。
相手方が代理人の代理権の不存在につき善意、無過失なこと。
無権代理人が制限行為能力者でないこと。
効果
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