契約の解除
解除権の発生
約定解除
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
法定解除
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
・相当の期間を定めて催告すること
債務者の不履行意思が明確な場合も必要とします。
背信性がい著しい場合には(不信行為等)相手方に催告なくして解除できます。(最判S27.4.25)(催告の特約がある場合も同様です。)
・相当期間の経過
相当期間とは、すでに履行の準備をしてある債務者が履行をするのに必要な期間です。
定期行為の履行遅滞による解除権の発生
第五百四十二条 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
履行不能による解除権発生の要件
第五百四十三条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
※催告は不要です。
不完全履行による解除
債務が追完可能な場合は催告が必要ですが、追完不可能な場合は催告は不必要です。
解除権の不可分性
第五百四十四条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
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契約
契約の効力
双務契約の牽連性
一方の債務が成立しないときは、他方の債務も成立しない。
同時履行の抗弁権
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
※債務者が一度弁済の提供したことにより債権者が受領遅滞にある場合でも、再び履行を請求されたときに、債権者は同時履行の抗弁権を主張できます。(最判S34.5.14)
裁判において、同時履行の抗弁権が主張されれば、「引換給付判決」がなされます。
危険負担
債権者主義
第五百三十四条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
停止条件付
第五百三十五条 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
2 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
3 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
債務者主義
第五百三十六条 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
※危険負担は債務者主義が原則です。
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契約総論
契約
対立する2つ以上の意思表示が合致して成立する法律行為です。
(原則自由ですが公序良俗に反する契約は認められません。)
契約の種類
・典型契約
民法に規定する13種類の契約
・非典型契約
上記以外
・双務契約
当時者双方が対価的意義を有する義務を負う契約
・片務契約
当事者の一方のみが債務を負うか、又は、双方が負う債務が互いに対価的意義を有しない契約
・有償契約
当事者双方が経済的損失をする契約
・無償契約
当事者の一方しか経済的損失をしない契約
・諾成契約
当事者の合意のみで成立する契約
・要物契約
当事者の合意の他、物の引渡その他の給付が必要な契約
申込と承諾
申込の効力発生
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
※2項に関しては、
第五百二十五条 第九十七条第二項の規定は、申込者が反対の意思を表示した場合又はその相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用しない。
申込の拘束力
期間の定めのある申込
第五百二十一条 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。
2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
※到達前であれば撤回できます。
期間の定めのない申込
第五百二十四条 承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
承諾
効力発生時期
第五百二十六条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
承諾・申込撤回の通知の延着
承諾の通知の延着
第五百二十二条 前条第一項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。
2 申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは、承諾の通知は、前条第一項の期間内に到達したものとみなす。
第五百二十三条 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
申込撤回の通知の延着
申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。
2 承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。
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債権の消滅・5
更改
当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。
2 条件付債務を無条件債務としたとき、無条件債務に条件を付したとき、又は債務の条件を変更したときは、いずれも債務の要素を変更したものとみなす。
要件
・旧債務が存在すること
・新債務が成立すること
・債務の要素を変更すること
※これに加え更改の意思が必要です。
債務者の交替による更改
債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反するときは、この限りでない。
債権者の交替による更改
債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
※新旧両債権と債務者の三者間で契約が必要です。(判例)
質権又は抵当権の移転
更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
※根抵当権は移動できません。
免除
債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
※第三者の権利を害することはできません。
混同
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
※判例では賃借人から土地を借りている転借人がその土地の所有権を取得しても、当事者間の合意がない限り、混同にて転借権は消滅しません。
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債権の消滅・4
相殺
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
相殺する側の債権を自働債権といい、相殺される側の債権を受動債権といいます。
※抵当不動産の第三取得者が抵当権者に有する債権では相殺できません。(判例)
相殺の方法及び効力
第五百六条 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
時効により消滅した債権を自働債権とする相殺
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
※時効完成後に時効により消滅した債権を譲り受けても相殺できません。(最判S36.4.14)
相殺ができない債権
・債権自体の性質による禁止
現実に履行されなければ目的を達成できないもの(「なす債務」)
・自働債権に抗弁権が付着している債権
同時履行の抗弁権が付着している債権や催告・検索の抗弁権の付着する保証契約上の債権(判例)
・当事者の合意による禁止
善意の第三者には対抗できません。(505条2項)
法律で禁止されている場合
不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止
債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
※不法行為債権を自働債権とする相殺は認められます。(最判S42.11.30)
自働債権、受働債権が別個の原因に基づく不法行為債権である場合は相殺できません。(判例)
差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
※差押前に債権を取得していた場合は相殺できます。(最判S45.6.242)
ただし債権を差し押えれた側から相殺はできません。
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債権の消滅 3
弁済受領権者
受領権限のない者に弁済した場合
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
※債権の準占有者とは、取引観念上債権者らしい外観を有するものです。
真の債権者は債権の準占有者に対して、不当利得による返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権を行使できます。
前条の場合を除き、弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
受取証書の持参人に対する弁済
受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
※受取証書は真正なものでなければならず、偽造されたものは無効です。
債権者に受領権限がない場合
債権の差押
支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2 前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
※債権者が破産手続開始決定を受けたときは、破産管財人に対して弁済しなければなりません。
弁済受領者義務
受取証書の交付
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
※弁済と受取証書の交付は同時履行の関係にあります。(判例)
弁済の充当
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
3 前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
法定充当
弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
代物弁済
債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
本来の給付と同価値である必要はなく、給付の種類に制限もありません。
不動産の場合は対抗要件を具備(登記)をしなければ、代物弁済の効力は発生しません。(判例)
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債権の消滅 2
弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
※代位と債権譲渡は似ますので第四百六十七条規定が準用されます。
法定代位
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
正当な利益を有する者
・自ら債務を負っていないが、債務者の意思に反しても弁済できる利害関係を有する第三者
物上保証人・抵当不動産の第三取得者・後順位担保権者等
・自ら債務を負っているが、債務者との関係では実質上他人の債務の弁済となる者
保証人・連帯保証人・不可分債務者等
※債権者の承諾はいりません。
任意代位
正当な利益を有しない者です。債権者の承諾が必要になります。(499条1項)
効果
前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
2 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
※一部弁済において、抵当権付の場合には債権及び抵当権は原債権者と代位者との準共有になります。
代位者相互間の効果
保証人が複数いる場合
共同保証人が分別の利益を有する場合とそうでない場合とで異なります。
物上保証人が複数の場合
不動産の価格の割合です。(501条4項)
保証人と物上保証人がいる場合
501条5項 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
保証人・抵当不動産の第三取得者間
501条1項 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
※第三取得者出現後に保証人が弁済した場合は、代位の付記登記は不要です。(最判S41.11.18)
代位者・債権者間の効果
第五百三条 代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
2 債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
第五百四条 第五百条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。
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債権の消滅
消滅原因の法律的性質
法律行為
・債権者の行為→免除
・債務者の行為→相殺・供託
・債権者・債務者の行為→代物弁済、更改
準法律行為
・弁済
事件
・混同、債務者の帰責事由によらない履行不能
弁済の提供
要件
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
特定物債権
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
※履行期までに特定物が壊れていても引き渡しを行えばそれで足ります。
種類債権
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
他人の物を引き渡した場合
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
※弁済をされたものが即時取得の要件を満たす場合は、有効な弁済となります。
前二条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
譲渡能力のない者よる引渡
譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
弁済の場所・時期・費用
弁済の場所
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
弁済の時期
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
弁済の費用
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
方法
現実の提供
債権者の協力がなくても、債務者自身で給付の主要な部分を完了すること。
口頭の提供
債権者があらかじめ受領を拒絶してる場合
債務者が弁済の準備を行うことにより債務履行を逃れます。(催告します。)
債務の履行につき債権者の行為が必要な場合
弁済の準備をしたうえで、債権者に通知します。
口頭の提供すら不要な場合
債権者の受領拒絶の意思が明確なとき(最大判S32.6.5)
効果
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる
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債権譲渡・3
債務者の抗弁
債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
※譲受人は善意である必要があります。
保証人は復活しません。(大判S15.10.9)
抵当権は利害関係のある第三者がある場合は復活しません。(債務者所有のものである場合は復活します。)
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
・譲渡債権が不正立・無効
・取消・解除により譲渡債権が消滅
・弁済等によって譲渡債権の全部又は一部が消滅
・同時履行の抗弁権をもって対抗できる
・譲渡人に対し有する反対債権のもって対抗(相殺)
債権譲渡登記
特例法に基づいて譲渡人が法人の場合のみできます。
対抗要件
動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
第四条 法人が債権(指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法第四百六十七条 の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。
2 前項に規定する登記(以下「債権譲渡登記」という。)がされた場合において、当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に第十一条第二項に規定する登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしたときは、当該債務者についても、前項と同様とする。
3 前項の場合においては、民法第四百六十八条第二項 の規定は、前項に規定する通知がされたときに限り適用する。この場合においては、当該債権の債務者は、同項に規定する通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗することができる。
4 前三項の規定は、当該債権の譲渡に係る第十条第一項第二号に掲げる事由に基づいてされた債権譲渡登記の抹消登記について準用する。この場合において、前項中「譲渡人」とあるのは「譲受人」と、「譲受人」とあるのは「譲渡人」と読み替えるものとする
※民法497条の対抗要件と動産・債権譲渡特例法の対抗要件が競合した場合、対抗要件を備えらえたときの先後で決まります。
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債権譲渡・2
指名債権譲渡の対抗要件
債務者への通知又は債務者の承諾です。
指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
債務者による対抗要件
対抗要件が成立するまでは譲渡人への弁済は有効であり、譲受人に対しては弁済を拒否できます。
通知
通知は必ず譲渡人からしなければならず、譲受人が代位を出来ません。(判例)
※譲受人は譲渡人に通知をするように請求はできます。
通知が譲渡後にされたときは、通知したときから対抗力が生じます。
承諾
譲渡人に譲受人いずれに対してもでき、譲渡前の承諾も有効です。(最判S28.5.29.)
債権の二重譲渡
・確定日付のある通知は、確定日付のない通知に優先します。
※確定日付のある通知が後に届いたとしてもです。(大連判T8.3.28)
ただし、すでに債務者が弁済した後(確定日付のない通知)では確定日付のある通知で譲渡されたとしても債権自体を取得できません。(大判S7.12.6)
・双方に確定日付のある通知
到着の先後になります。(先に到達した方が有効です。)(最判S49.3.7)
※片方が差し押さえ命令の場合も同様です。(最判S58.10.4)
・双方が確定日付のない通知
債務者はどちらの請求も拒め、どちらに弁済しても効力を発揮します。(大判T8.8.25)
・双方が確定日付のある通知が同時に到達
債務者はどちらからの請求も拒めませんが、片方に弁済すれば債務を逃れます。
※到達の先後が不透明な場合は同時到達として扱います。(最判H5.3.30)
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