非典型担保

民法上は担保権として規定されていませんが、実質的に担保機能を内在されている権利で、判例上も一定の承認を得れています。

譲渡担保

金銭債務を担保するため、債務者所有物の物の所有権を法形式上債権者に移転させる方法です。

債権者への所有権移転という形式をとりますが、多くはその後も設定者(債務者)がその目的物を使用続けます。

所有権留保

売買代金が完済されるまでは目的物の所有権を売主に留保していく方法です。

自動車の割賦販売などが例に挙げられます。

仮登記担保

金銭等の借入に対して、債務者(担保提供者)所有の不動産をもって弁済に代える(代物弁済)という契約をし仮登記をします。

停止条件付代物弁済、代物弁済予約等の形式が用いられます。

債務不履行後、2か月の清算期間を経過後、目的物の所有権が債権者に移転します。(仮登記担保契約に関する法律2条1項)

代理受理

債権等の権利を担保の目的にします。

例えば、AがBに対して融資を行う場合、BのCに対する金銭債権の弁済受領の委任を受けて、Aの融資金の弁済に充当する方法です。

 

 

 

 

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根抵当権・3

抵当権の処分

第三百九十八条の十一

元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。

 第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。

※転抵当に関しては可能です。ただし、元本確定前に原抵当権者に弁済をした場合でも、弁済による被担保債権の消滅をもって転抵当権者に対抗出来ます。

譲渡

全部譲渡

第三百九十八条の十二

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。

 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。

 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

※全部譲渡をすることによって譲渡人の債権は一切担保されなくなります。

分割譲渡・一部譲渡

第三百九十八条の十三

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

※分割譲渡のみ利害関係人の承諾も必要です。

根抵当権の共有

第三百九十八条の十四

根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。

 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。

共同根抵当権

第三百九十八条の十六

第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

※「同一の債権」とは債権の範囲、債務者、極度額がすべて同一のことです。

変更

第三百九十八条の十七

前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。

 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。

優先弁済権

第三百九十八条の十八

数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。

※共同担保にならない累積式根抵当権の場合は適用されません。

 

元本の確定事由

・確定期日が到来したとき。

・相続の場合に合意の登記をしなかったとき。(6ヵ月以内にしなかった場合は、相続開始のときに元本が確定したものとみなされます。)

・合併の場合に設定者が確定請求をしたとき

・会社分割の場合に設定者が確定請求をしたとき

・設定後3年経過後に設定者が確定請求をしたとき

・根抵当権者が確定請求をしたとき

第三百九十八条の十九

根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。

 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。

 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

・根抵当権者が抵当権を実行したとき

・根抵当権者が滞納処分による差押をしたとき

・他の債権者の申し立てによる抵当不動産の競売手続き等を知ったとき

・債務者または設定者の破産

三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。

 根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。

 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。

 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。

 債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

極度額減額請求

第三百九十八条の二十一  元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。

 第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。

 根抵当権消滅請求

三百九十八条の二十二

元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。

 第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。

 第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。

※主たる債務者・保証人及びこれらの承継人・条件成否未定の間の停止条件付権利取得者については、消滅請求できません。

 

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根抵当権・2

元本確定前の当事者と包括承継

相続の場合

元本が確定することを原則としています。(継続する意思があれば別です。)

三百九十八条の八

元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。

 第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。

 第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。

会社合併の場合

元本が確定しないことが原則となります。

第三百九十八条の九

元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。

 前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。

 前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。

 第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。

会社分割の場合

第三百九十八条の十

元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。

 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

 前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。

 

 

 

 

 

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根抵当権

第三百九十八条の二

抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。

 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

設定

合意により成立する諾成契約です。

債権範囲・債務者・極度額を定めなければなりません。

 

性質・効力

物権性

約定担保物権であり、対抗要件登記、目的物の消失、権利の放棄、混同によって消滅します。抵当権と同じです。

担保物件性

第三百九十八条の三

根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

 債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。

 債務者の支払の停止
 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え

※元本確定後に生じた債権については担保されません。

元本確定前の根抵当権

付従性を不定します。

随伴性も不定します。

第三百九十八条の七  元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。

 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。

 元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。

 

根抵当権の変更

債権の範囲変更・債務者の変更

第三百九十八条の四

元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。

 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

極度額の変更

第三百九十八条の五

根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

確定期日の変更

第三百九十八条の六

根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。

 第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。

 第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。

 第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。

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抵当権・4

共同抵当

同一の債権を担保するため複数の不動産を目的とした抵当権です。

設定方法

当事者の合意で成立します。同時に設定もでき、追加で設定もできます。

 

配当方法

同時配当

第三百九十二条

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

※後順位抵当権者がいなくてもこの配当です。(大判S10.4.23)

異時配当

 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

※次順位者に限定されません。広く後順位者も含まれます。

共同抵当の目的不動産が物上保証人の所有である場合は、後順位抵当権者は代位できません。(最判S44.7.3)

共同抵当権の放棄

放棄しなければ後順位抵当権者が392条2項の規定によって代位出来た範囲で、後順位抵当権者に優先できません。(大判S11.7.14)

 

時効

消滅時効

第三百九十六条

抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

時効取得

第三百九十七条

債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

抵当権の目的である地上権等の放棄

第三百九十八条

地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

※この条文は借地権にも適用されます。

 

抵当権の侵害

抵当権は物権なので、その侵害に対しては物権的請求権(妨害排除請求権)と侵害者に対して不法行為による損害賠償も請求できます。

先順位の抵当権が実体上はすでに消滅しているのに、抹消されていない場合。

登記の抹消を請求できます。(大判T8.10.8)

抵当権の目的となっている山林上の立木が、抵当権者に無断で、かつ通常の用法の範囲を超えて伐採・搬出された場合。

部外排除請求権として、伐採・搬出を禁止でできます。(大判S7.4.20)

債務者が第三者に対して権利を行使しな場合、債権者が代わりに権利を行使できます。

第四百二十三条

債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

不法占拠者に対しても行使できます。

占有権限の設定を受けている(抵当権設定登記後)占有者にも行使できます。(最判H17.3.10)

 

 

 

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抵当権・3

抵当不動産の第三取得者

代価弁済

第三百七十八条

抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

※地上権を買い受けたときは相対的に消滅します。抵当権自体は消滅しません。(抵当不動産の競売も出来ます。)

抵当権消滅請求

第三百七十九条

抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

第三百八十条

主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

第三百八十一条

抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

※所有権以外の権利を取得したも者は行使できません。無償での取得でも可能です。

時期

第三百八十二条

抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

方法

第三百八十三条

抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。

 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面

 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)

 債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

第三百八十六条

登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

抵当権者のみなし承諾

第三百八十四条

次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。

 その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
 その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
 第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
 第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条 において準用する同法第六十三条第三項 若しくは第六十八条の三第三項 の規定又は同法第百八十三条第一項第五号 の謄本が提出された場合における同条第二項 の規定による決定を除く。)が確定したとき。

賃借権に対する効力

競売された不動産の賃借権は消滅しますが、次の要件を満たすことにより対抗できるようになります。

第三百八十七条

登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。

 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

明渡猶予制度

第三百九十五条

抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者

 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

 

法定地上権

第三百八十八条

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

成立要件

・抵当権設定当時、土地の上に建物が存在

・抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者

・土地と建物の一方(双方)に抵当権が存在

・競売の結果、土地と建物が異なる所有者に帰属

土地が共有の場合

土地共有者1人についてのみ法定地上権の成立要件を満たしても、原則として成立しません。

※共有者が法定地上権の発生をあらかじめ容認していたような場合は成立します。

建物が共有の場合

共有者の1人についてのみ法定地上権の成立要件を満たせば、原則的に成立します。

 

抵当権の実行 競売

第三百八十九条

抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

 

 

 

 

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抵当権・2

被担保債権の範囲

担保される利息の範囲

第三百七十五条

抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。

 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

目的物の範囲

第三百七十条

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

※従物が抵当権設定当時宅地の常用のためにこれに付属させられたものであるときは、この従物たる物権にも及びます。(最判S44.3.28)

特段の事情がない限り賃借権にも及びます。(最判S40.5.4)

果実の対する効力

第三百七十一条

抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

※原則として及びません。

物上代位の目的物

・売却代金

304条の規定を準用します。

目的物の売却代金にも物上代位権を行使できるとするのが通説です。

・賃料

抵当不動産の賃料債権に対する物上代位権の行使は認められています。(最判H10.27)

ですが、転貸賃料債権については認められていません。(最判H12.4.14)

・抵当不動産の保険金請求権

認められています。(大連判T12.4.7)

 

 抵当権の順位

第三百七十三条

同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

抵当権の順位変更

第三百七十四条

抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。

 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。

※利害関係を有する者とは順位変更により、不利益を受ける者です。(転抵当権者等です。利益を受ける者と抵当権設定者の承諾は必要ありません。)

抵当権の処分

第三百七十六条

抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。

 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

種類

・転抵当

抵当権者が抵当権を他の債権の担保にすることです。原抵当権と転抵当権、双方の弁済期が到来していれば目的不動産の競売ができます。

・抵当権の譲渡

譲渡を行った場合、受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。(譲渡人の配当額の分で振り分けられます。抵当権自体が移転するのではなく、弁済優先権が移転します。)

・抵当権の放棄

同一の債権の債権者に対して、無担保の一般債権者に対する関係で放棄することです。放棄した抵当権者の本来の配当額の内で債権額の割合に応じて、受益者と振り分けられます。(抵当権者の配当額が600万で受益者の債権が400万の場合、3:2で振り分けられ、抵当権者が360万、受益者が240万となります。)

・抵当権の順位の譲渡

自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に取得させることです。受益者が先に弁済を受け、配当額に残金がある場合、譲渡人に弁済されます。

・抵当権に順位の放棄

自己の有する優先弁済権を、特定の後順位の抵当権者に対する関係で放棄することです。配当額は抵当権の放棄と同一です。

対抗要件

第三百七十七条

前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。

 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。

 

 

 

 

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抵当権

債務者または第三者(物上保証人)が提供した不動産につき、その占有を担保提供者(設定者)のもとにとどめたまま設定される約定担保物権です。

性質・効力

物権性

目的物の滅失、権利の放棄、混同により消滅します。

担保物権性

付従性、随伴性、不可分性、物上代位性、優先的弁済効力を有します。

保証人が主債務者に対して将来取得すべき求償債権を担保するために、抵当権を設定できます。(最判S33.5.9)

抵当権の設定

目的物

第三百六十九条

抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

※所有権の一部や共有持ち分の一部のみの抵当権の設定はできません。

被担保債権

種類

・非金銭債権を担保するための抵当権の設定。

・1個の債権の一部についてのみ抵当権の設定。

(300万円の債権の内、100万円のみ抵当権の設定を行うことも可能です。)

・複数の債権を一括して担保する抵当権の設定。

(債権者が同一で債務者が異なる場合は可能です。)

抵当権設定契約

抵当権者(債権者)と抵当権設定者との間に締結されます。

抵当権者は債権者ですが、抵当権設定者が債務者以外の第三者(物上保証人)でも可能です。

対抗要件

登記になります。

 

 

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転質

質権者が質物をさらに他人に質入れをすることを転質といいます。この場合、最初の質権設定者を原質権設定者となり、転質者を原質権者といいます。

責任転質

質権者が自己の責任をもって転質することです。

成立要件

・要物契約性

当事者の合意と目的物の引渡です。

・被担保債権額

原質権の被担保債権の額が転質権の被担保債権の額を超過する場合は、転質権はその被担保債権全部を担保するものとして成立し、競売された場合には、売却代金から債権額全額について優先弁済を受けることができます。(残金は原質権者に配当されます。)

転質権の被担保債権の額が原質権の被担保債権の額を超過する場合は、原質権の被担保債権の額の分までしか担保されません。

原質権者の責任

不可抗力であっても原質権者はそのすべての賠償の責任を負わなければいけません。

転質権の実行

転質権の実行には、原質権の被担保債権の弁済期も到来していなければなりません。

※原質権の被担保債権の弁済期が転質権の被担保債権の弁済期よりも先に到来した場合、原質権設定者を弁済金額を供託させることができ、以後はその供託金返還請求権の上に優先弁済権を有します。

 

 

 

 

 

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質権各論

動産質

成立要件

引渡によって成立しましす。

対抗要件

第三百五十二条

動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

※第三者に引渡た場合、質権自体は消滅しませんが、第三者に対抗出来なくなります。(大判T5.12.25.)

質物の占有回復

第三百五十三条

動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

簡易な弁済充当

第三百五十四条

動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。

動産質の順位

第三百五十五条

同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。

※指示による占有移転の方法でも動産質が認められるため、同一の動産について複数の者に質権が設定出来ます。

 

不動産質

成立要件・対抗要件

当事者間の質権設定の合意と目的不動産を債権者に引き渡すことで成立します。

第三者への対抗要件は登記になります。

使用収益・管理費用の負担

第三百五十六条

不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。

第三百五十七条

不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。

利息請求権

第三百五十八条

不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。

存続期間の制限

第三百六十条

不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。

 不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。

債権質

債権質の設定

当事者間の質権設定の合意だけで成立します。債権証書を債権者に交付する必要があります。

第三百六十三条

債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。

目的債権

第三百六十四条

指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

対抗要件

第三百六十四条

指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

第四百六十七条

指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

質権者による債権の直接の取り立て

第三百六十六条

質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。

 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。

 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。

 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

 

 

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