質権
意義
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
要件
目的
質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
質権設定契約
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
簡易の引渡、指図による占有移転も含まれます。占有改定は質権の成立要件に含まれません。
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
※動産の持ち主でないの者(処分権限がない者)が勝手に質権を設定した場合でも、目的物が動産で、債権者が善意かつ無過失でその者に処分権限があると信頼して目的物を受け取った場合、即時取得により質権が有効に成立します。(大判S7.2.23)
被担保債権の範囲
質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
性質・効力
被担保債権の消滅時効
賃金債権の消滅時効は進行します。
流質契約の禁止
質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
例外
・特約(流質契約)の履行が質権設定者の意思にゆだねられてる場合(大判M37.4.5)
・弁済期後にする場合
物上保証人の求償権
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
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先取特権・2
順位
一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
一般の先取特権相互間の順位
1・共益費用
2・雇用関係
3・葬式費用
4・日用品供給
動産の先取特権の順位
同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
3 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。
不動産の先取特権の順位
第三百三十一条
同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
2 同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
※登記の先後は関係ありません。
同一順位の先取特権者の優先弁済権
同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
特別な効力
第三取得者との関係
第三百三十三条
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
※この引渡には占有改定も含まれます。(大判T6.7.26)(賃借権や質権者は含まれません。)
動産質権との順位の関係
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
※動産質権者が先取特権者を知っていた場合、動産質権者は優先権を行使できません。(330条2項)
一般の先取特権の効力
一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
2 一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
3 一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
4 前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
登記のない一般の先取特権の対抗力
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
※一般の先取特権も登記はでき、民法177条により、登記した第三者に対抗できますが、不動産の保存・工事の先取特権には劣後します。
不動産保存・工事に先取特権の抵当権に対する優先力
不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
※不動産売買の先取特権に関しては、特に定めがないため、原則どおり登記の先後に優先します。
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先取特権
民法上特に保護する必要性の高い債権を、他の債権に優先して弁済を受ける権利です。
法廷担保物権です。
付従性、随伴性、不可分性、物上代位性、優先的弁済効力を有します。(留置権、収益的効力を認められません。)
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
種類
一般の先取特権
債務者の財産の上に成立します。
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
葬式費用の先取特権
日用品供給の先取特権
日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
動産の先取特権
債務者の特定の財産の上に成立します。
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
不動産の先取特権
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
不動産工事の先取特権
2 工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない
不動産売買の先取特権
不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
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留置権
要件
債権者が他人の物(動産・不動産)を占有していること。(他の第三者の所有物を含みます。)
その物に関して生じた債権を有していること。(債権と物の牽連性)
物権性
留置権は目的物が不動産でも登記はできず、登記がなくても第三者に対抗できます。目的不動産が第三者に売り渡された場合でも、留置権は継続します。(最判S47.11.16)
担保物権性
付従性・随伴性・不可分性・留置的効力を有します。
物上代位性や優先弁済を受ける効力はありません。(留置物の競売は認められています。(形式的競売・民事執行法195条))
効力
引換給付判決
債務者が留置物の返還を求めて訴訟を提起した場合、この訴訟において債権者が抗弁として留置権を主張したとき、裁判所は債務者の返還請求を棄却することなく、債権者に対して、債務者から被担保債権の弁済を受けるのと引換に、留置物の引渡を命じる判決(引換給付判決)をなすべきであるとされています。(最判S33.3.13)
果実収取権
※法廷果実も含まれます。(判例)
留置物の保管義務
※当然に消滅するわけではありません。
留置権者の費用償還請求権
※この必要費の返還を受けるまで留置権は行使できます。(最判S33.1.17)
留置権の消滅
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担保物件
種類
留置権・先取特権(法廷担保物件(法律上当然に成立する。))
質権・抵当権(約定担保物件(当事者の約定(契約)によって成立する。))
付従性
被担保債権が成立しなければ担保物件も成立せず、被担保債権が消滅するとその担保債権も消滅します。
随伴性
被担保債権が他人に譲渡されると、担保物権もそれに伴い移転します。
不可分性
担保権者は、被担保債権の全部が弁済されるまで、目的物の全部についてその権利を行使できます。
物上代位性
担保権者は、目的物の売却・減失・損傷などにより、債務者が受ける金銭その他の物に対して権利を行使できます。
担保物権のうち目的物の交換価値を把握して、それから優先弁済を受けることを内容とするもの(先取特権・質権・抵当権)が有する性質です。
優先弁済的効力
被担保債権が任意に弁済されない場合に、担保目的物から他の債権者に優先して弁済をうけることができる効力です。(先取特権・質権・抵当権が有します。)
留置的効力
担保権者が、債務の弁済を受けるまで目的物の占有を継続することによって、間接的に債権の弁済を強制できる効力です。(留置権と質権が有します。)
収益的効力
担保権者が目的物を使用収益できる効力です。(原則として不動産質権のみが有します。)
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用益物権 地役権
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
便宜を受ける土地を要役地、便益を供する土地を承役地といいます。
要役地は一律の土地でなければなりませんが、承役地は、一律の土地の一部でもかまいませんし、隣接している必要もありません。
随伴性・附従性
時効・取得
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
※継続的行使されていると認められるためには、通路が要役地の所有者によって開設されている必要がありあます。
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用益物権 地上権
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
譲渡・賃貸・担保権設定
土地使用権
地上権は物権であり、債権のように「人」になにかを請求する権利ではないので、土地所有者は地上権者の土地使用を妨げないという消極的義務を負うにとどまります。
土地を使用するための、相隣関係の規定(209条~238条)が準用されます。
前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。
存続期間
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所有権 共有
数人が具体的な持分権を有する共同所有形態です。各所有者の権利を持分権といいます。
持分権
各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
処分
持分の譲受人は第三者に当たるため、登記をしなけらば、他の共有者に持分を対抗できません。(最判S46.6.18)
共有物の利用
第二百四十九条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
第二百五十一条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
※同意を得ないで共有物を変更行為を行った共有者に対しては、変更行為の禁止、原状回復請求も可能です。(最判H10.3.24)
第二百五十二条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
※勝手に使用している共有者に対して、当然には共有物の明け渡しを請求できません。(最判S41.5.19)第三者に許可を出し、使用していた場合も同様です。(最判S63.5.20)
二百五十二条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
※使用賃借契約の解除や第三者への賃貸借契約解除も管理行為にあたります。
※不法占拠への妨害排除請求・返還請求や不法な登記の抹消請求は保存行為となります。
管理費用の負担
共有物についての債権
第二百五十四条
共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
持分の放棄及び共有者の死亡
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
※他の共有者が持分を取得した場合、登記をしなければ第三者に対抗できません。(最判S44.3.27)
共有物の分割
利害関係人の参加
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所有権の取得
無主物の帰属
遺失物の取得
第二百四十条
遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
※所有の意思は不要です。
埋蔵金の発見
第二百四十一条
埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
添付
所有者のことなる2個以上の物が何らかの事由により統合した場合、民法は1個のものとして所有権を認めています。
符合・混和・加工に分類されます・
符合
土地と建物は別物です。
不動産の符合
第二百四十二条
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
※独立性が認められなければ、ただし書きの部分は該当しません。
動産の符合
加工
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所有権
所有権
二百六条
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
第二百七条
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
相隣関係
囲繞地通行権
※袋地の所有者は登記がなくても囲繞地通行権を主張できます。(最判S47.4.14)
通行の場所・方法
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