占有権 2

占有の提起

第百九十七条

占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

 

占有保持の訴え

第百九十八条

占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

要件

占有の侵奪以外の方法による占有の妨害行為。

請求

妨害に対し、相手に故意・過失は必要ありません。相手に故意・過失があれば損害賠償の双方を請求できます。

提起期間

第二百一条
占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

占有保全の訴え

 

 第百九十九条
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
 要件
妨害されるおそれがあるときです。妨害の客観的可能性があるという程度の事情が必要です。(判例)
請求内容
相手方の故意・過失は不要です。妨害の予防か損害賠償の担保どちらか一方しか請求できません。
提起期間
 第二百一条
 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。

 占有回収の訴え

第二百条
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
要件

任意に引渡た場合や遺失物を誰かが拾った場合は占有回収の訴えは出来ません。

請求内容

返還の場合相手方の故意・過失は不要。損害賠償の場合は必要。

提起期間

第二百一条

   3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。

 

 

 

 

 

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占有権

成立要件

第百八十条

占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

※意思能力のないものは占有権を取得できません。

第百八十一条

占有権は、代理人によって取得することができる。

※意思無能力者は、法定代理人を通じて占有します。

 

占有の意思

第百八十五条

権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

自主占有 所有の意思をもってする占有(売買の買主等)

他主占有 所有の意思をもたずにする占有(賃借人等)

 

第百八十六条
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

※無過失は推定されません。

第百八十七条
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

占有権と相続

民法に規定はありませんが、判例は相続を認めています。(最判S44.10.30)

 

占有権の効力

第百八十八条

占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

※「占有物について行使する権利」とは、占有を正当化するすべての権利(所有権その他の物権、賃借権等の債権)(大判T4.4.27.)

 

 

果実取得権

善意占有者

第百八十九条

善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

悪意占有者

第百九十条
悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

滅失・損害責任

第百九十一条

占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

費用償還請求権

必要費

第百九十六条

占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

※善意・悪意問わず。

有益費

 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

※悪意の占有者は有益費の支払いを待たずに留置権を失い、すぐに返還しなければなりません。

 

 

 

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動産物権変動 即時取得

即時取得

第百九十二条

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

要件

・目的物が動産であること

登記されている立木、登録を受けている自動車、(未登録は車は動産)金銭は含まない。

・取引行為での取得であること

売買、贈与、代物弁済、強制競売。事実行為や相続等は含まない。

有効な取引行為でなければならない。(詐欺、脅迫、錯誤、無権代理者との取引等は例外)

・前主が無権利であること

・平穏・公然、善意・無過失

占有開始時であれば足ります。無過失を立証する責任はありません。

・占有の開始

 

占有改定と即時取得

占有改定による即時取得は認められません。(最判S35.2.11)

 

占有移転と即時取得

指示による占有移転は認められます。(最判S57.9.7)

 

盗品及び遺失物の特則

第百九十三条

前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

第百九十四条

占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

※詐欺により騙された場合はこの適用はありません。

 

 

 

 

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動産物権変動 明認方法

明認方法とは

土地に定着するもの(立木や未分離果実等)について、習慣上の公示方法で判例により対抗要件として認められたものです。

※取引上の必要がある場合は、立木法が定める立木登記または明認方法を施すことにより、土地とは別個の独立した物として扱われます。

明認方法は、第三者が利害関係を有するに至った時点において存続していないと対抗力が認められません。(最判S36.5.4)

対抗力

立木のみの二重譲渡

明認方法を先に施した方が優先します。

立木のみの譲渡と土地及び立木の譲渡

土地とともに立木を譲渡する場合の対抗要件は土地についての所有権移転登記になります。

優劣は、立木の明認方法か所有権移転登記の先後になります。

立木所有権の留保

留保も物件変動のひとつであるとして、明認方法を施さない限り、立木の所有権を第三者に対抗できない。(最判S34.8.7)

 

土地及び立木の二重譲渡

立木のみの明認方法と所有権移転登記

AがBより土地と立木を買い受け、立木のみ明認方法を施した場合、BはさらにCに立木と土地を売渡、Cは土地の所有権移転登記を済ませた場合

土地と共に立木を譲渡した場合は、土地の所有権移転登記が対抗要件となります。

※Aの立木の明認方法が先でも関係ありません。

 

 

 

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動産物権変動 対抗要件

引渡

引渡がなければ第三者に対抗できません。

第百七十八条

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

※所有権に限られます。

 

・現実の引渡

第百八十二条

占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

・簡易の引渡

第百八十二条

2 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

・占有改定

第百八十三条

代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

・指示による占有移転

第百八十四条

代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

※代理人の承諾は必要ありません。

 

 

 

 

 

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取得時効と登記

時効完成前の第三者

AはBが所有する土地の占有を行いましたが、Aの取得時効完成前にBがCに土地を売り渡し、その後、Aの取得時効が完成した場合。

時効完成前の第三者に対して、自己の所有権を登記なくして主張出来る。(大判T7.3.2 最判S41.11.22)

 

時効完成後の第三者

AはBが所有する土地の占有を行い取得時効を完成した。その後、BがCに土地を売り渡した場合。

Aは登記なくしてCに自己の所有権を主張出来ない。(最判S33.8.28)

(Aは取得時効が完成したのに、登記を怠っていたので仕方ないとする対抗要件主義)

※Cが背信的悪意者の場合は登記なくしてもAは自己の所有権を主張出来る。

 

 

 

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登記を対抗要件とする物件変動

 相続と登記

八百九十六条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

被相続人から生前譲渡された第三者との関係

売主が買主Aに売買契約した後死亡し、売主から相続した相続人が被相続人と買主Aとの売買を知らずに買主Bに売り渡した場合、買主Aと買主Bは対抗関係に立ちます。(大連畔T15.02.01)

※登記が済んでいる場合は登記が優先されるので、対抗関係に立てません。

 

共同相続と登記

被相続人が死亡し、相続人AとBが共同相続したときBが単独で相続した土地を登記しCに売渡した場合、Aは登記がなくてもCに対抗できます。Bの登記は無権利だからです。

※Aに帰属性が認められれば、Cは保護される可能性もあります。

※Bの持分は取得できます。

 

相続の放棄と登記

被相続人が死亡し、相続人AとBが共同相続したとき、Bが相続を放棄したが、Bの債権者がABで共同で相続した登記をして、Bの持分を差押場合は、

Bの債権者の差押は無効になります。相続の放棄の効力はは絶対的で、何人に対しても、登記なくして主張できます。(最判S42.01.20)

※Aは単独の相続人であることを主張できます。

 

 

 

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不動産物件変動

第百七十七条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第三者

当事者及びその包括承継人以外の者。

「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」(大判例M41.12.15)

・物件を取得した者

・不動産を差し押さえた第三者、仮差押をした第三者(判例)

・賃借人

(賃貸人は対抗するためにも登記が必要(判例・多数説))

第三者に当たらない者

・無権利者

・不法行為者・不法占拠者(判例)

背信的悪意者排除説(現在の判例・通説)

背信的悪意者は第三者に当たりません。

信義則に反するような悪意者は保護に値しません。

 

背信的悪意者からの転得者

判例 転得者が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されない限り、第一買主は登記がなければ対抗できない。(最判H8.10.29)

転得者が背信的悪意者

判例 第一買主との関係で背信的悪意者と評価されれば、第三者にあたらない。

 

 

 

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物件変動

 

物件の発生

原子取得と承継取得があります。

 

物件の変更

物件の性質を変えない範囲で物件の容体・内容に変更を加えることです。

 

物件の消滅

目的物の減失

放棄

※第三者を害することは出来ません。

消滅時効

混同

※相対立する2つの法律的地位が同一人物に帰属することです。

抵当権者が抵当権設定者の土地を取得する場合等

 

混同により消滅しない場合

抵当権者が抵当権設定者の土地を取得した場合でも、後順位抵当権者がいる場合は消滅しない。

同一人物につき所有権及び他の物件が同一人物に帰属した場合であっても、物件が第三者の権利目的であるときは、混同によって消滅しません。

 

所有権以外を目的とする場合

 

第百七十九条
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
 前二項の規定は、占有権については、適用しない。

物権の設定及び移転

当事者の意思表示のみよってその効力を生じます。これを物件変動による意思主義といいます。

第百七十六条

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

 

移転の時期

特約のない限り、契約と同時に移転します。(最判S33.6.20)

物件変動が生じるための客観的な要件が満たされていない場合は、その要件が満たされたとき移転します。

 

対抗要件主義

第三者に対抗するためには、原則として、不動産の場合登記、動産の場合引渡といった公示方法が必要となります。

百七十七条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

 

 

 

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時効の効果・援用・放棄

時効の遡及効

時効の効力は起算日にさかのぼります。

時効を援用するものが勝手にその起算日を変更出来ない。(最判S35.07.27)

第百四十四条

時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

 

時効の援用

時効の利益を受けるの者が、時効の利益を受ける旨の意思表示をすること。

第百四十五条

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

援用権者

時効の当事者=時効により直接利益を受ける者(大判M43.01.25)

(保証人・連帯保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者・詐害行為の受益者)

援用の効果の相対性

援用権者が複数いる場合、そのうち1人が援用しても、その効果は他の援用者に及びません。(相対性)

 

時効利益の放棄

時効完成前には時効の放棄は出来ません。

第百四十六条

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

※時効の完成を困難にする特約等は認められない。

効果・方法

援用権者が複数いる場合、そのうち1人が援用しても、その効果は他の援用者に及びません。(相対性)

 

時効完成後の自認行為

時効の完成を知らずに債務を承認した場合。

信義則上消滅時効を援用することは許されない(時効援用の喪失 最判S41.04.20)

 

時効の中断

時効期間の進行を中断し、それまでの進行期間を無に帰します。

第百四十七条

時効は、次に掲げる事由によって中断する。

 請求
 差押え、仮差押え又は仮処分
 承認

請求

第百四十九条

裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

第百五十条
支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条 に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
第百五十一条
和解の申立て又は民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法 (平成二十三年法律第五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
第百五十二条
破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
第百五十三条
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
 ※6か月の起算点は相手方に催告が到達したときです。

差押え、仮差押え又は仮処分

 

第百五十四条
差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
第百五十五条 
差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。
※時効の中断効力は申し立てのときに生じ、その効力は差押の間継続します。

中断の効果

新たな時効期間の進行

第百五十七条
中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

 

 

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