不貞慰謝料請求の判例 case.1
平成8年6月18日、最高裁判所第三小法廷判例
太郎(仮名)と花子(仮名)は昭和59年1月に婚姻届を出した夫婦である。同年5月に長女、約2年後には長男が出生した。
友美(仮名)は昭和45年11月に結婚し、約1年後に長女を出生。しかし昭和61年4月に離婚をする。
友美は昭和60年10月から居酒屋の営業をして生計を立て、62年5月頃、元夫から長女を引き取り養育を始めた。
約1年半後、太郎は初めて客として友美の居酒屋に来店。週1程度通うようになるも、平成元年10月頃から約1年半、来店しなくなった。
この間、太郎は上記居酒屋の2階にあるスナックのホステスと半同棲の生活をしていた。
太郎が居酒屋に来店しなくなったころから花子が来店するようになり、太郎の女性問題など夫婦関係について愚痴をこぼすようになっていた。
「太郎とは時期をみて離婚する」とまで話していた。
平成2年9月頃、再び太郎が来店するようになり、友美を口説くようになった。
「本気に考えているのはお前だけ。妻とは別れる」
と毎日のように口説かれた上、病気持ちだった友美は徐々に太郎に惹かれ始める。
「妻とは別れる。お前の責任だと思う事はない。病気も一緒に治していこう」
友美はその言葉を信じ、太郎と肉体関係を持った。
平成2年10月頃から友美は太郎と結婚することを決心し、結婚生活の準備をし始めた。太郎の希望で土地建物を売却し、長女と新居を探していた。
一方太郎は、花子と離婚についての話し合いなどを全く進めていなかった。
同年12月、花子に太郎と友美の関係が発覚。
友美は花子に、「太郎は花子と離婚して自分と結婚をする約束をしている」と説明。
しかし、花子は友美に対して、不貞行為による慰謝料として500万円を請求。
その際、「500万さえ払えば太郎はあげる。太郎にかかればあなたをひっかけるのはたやすいわ」
などと言われ、友美は太郎に騙されていた、と感じた。
花子は太郎・友美両者に慰謝料請求。
太郎は好きにしろとの態度をとり友美は終始沈黙していた。
後日、友美の店に太郎が来店。花子に500万円を支払うよう要求。
拒否すると太郎は友美に暴行を加えた。
また後日、今度は花子が来店し、他の客の前で慰謝料について怒鳴り散らすなどの嫌がらせ行為を行った。
太郎と二人で嫌がらせ行為に及ぶ日もあった。
行為はエスカレートし、太郎は傷害罪で5万円の罰金刑に処された。
平成3年1月、花子は友美に対し不貞慰謝料請求訴訟を提起。
一審(奈良地方裁判所)は花子の請求を棄却したが原審(大阪高等裁判所)は、
「友美が太郎に妻がいる事を知りながら肉体関係を持ったこと」
「太郎と花子の婚姻関係は破綻していなかったこと」
を理由に、100万円の慰謝料を認めた。
これを受け、友美は上告。
結果、最高裁判所は、「花子が友美に、なにがしの損害賠償請求権を有するとしても、正当な範囲を逸脱し、正当な権利の行使とは認められない状態である」と判示し、請求を認めなかった。
別件として、友美は太郎に損害賠償請求訴訟を提起。
平成6年2月に200万円と遅延損害金の判決が出され200万円を毎月2万円ずつ支払う事などを内容とする和解が成立した。
(参考資料:「不貞慰謝料請求の実務」著者 中里和伸弁護士)
~探偵の一言~
今回のcase.1は特例です。
今回のcase.1で大事な所は
「いかに悪質な美人局でも不倫は不法行為に当たること」
「太郎と花子の2人が、大勢の前で嫌がらせをしたり傷害罪で罰を受けたこと」です。
友美が不法行為を犯しながら、花子の請求を認めさせず、太郎に損害賠償請求が出来たのは、
2人が大勢の前で嫌がらせをしたり、太郎が傷害罪で罰を受けたこと、という、証拠があったからです。
明らかに2人が結託していると認めざるを得ない証拠があったからこその、今回の結果です。
この証拠がなければ、友美は泣き寝入りしていた可能性もあるのです。
圧倒的不利な状況でも、証拠さえあれば戦う事が出来ます。
今回も本当であれば、「太郎が本当に花子と別れているのか」、その証拠を持っていれば、ここまで大事にはならなったでしょう。
友美のcase.1は特例ですが、通常、当事者本人が証拠を入手するのはかなり難しいことです。
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加害者の個人情報漏えい事件
横浜地検川崎支部の検事が強制わいせつ事件の加害者側に被害女性の住所などを漏らしたとして、
女性らが国に約530万円の損害賠償を求めた訴訟の和解が成立した。
13年8月に提訴した女性側は、
加害者に住所などを明かさない条件で刑事裁判に証人出廷することに同意し、
裁判所が女性の個人情報の秘匿を決めたのに、
担当検事が女性の住所と電話番号が記載された
捜査報告書を加害者の弁護人に送付するなどし、
加害者本人も情報を知ることになったと主張。
漏えいを知った女性は急性ストレス反応になったという。
国側は、当時の担当検事の落ち度を認めている。
中山孝雄裁判長の下で成立した和解は、国が200万円を支払う内容。
女性側の代理人弁護士は
「女性は精神的に不安定になっており、早期に裁判を終えるべきだと判断した」と和解に応じた理由を説明している。
わいせつ事件の被害者は匿名で起訴することが出来る。
現在、わいせつ事件などの被害者は匿名で起訴することができ、被害者のプライバシーが守られるようになった。
(本来は、犯罪の被害者が特定できないと犯罪行為の立証が出来ないので、裁判では認められない。わいせつ事件の特例)
だが、この制度が出来たのはごく最近のことで、行政側の方でのミスが目立つ。
特に警察や検事に漏洩があると、後の犯罪につながりかねない。
こういう事件が明るみになって初めて、行政側は対策を練る。
遅すぎる。後手に回り過ぎ。
しっかりしてもらいたい。
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