抵当権・4
共同抵当
同一の債権を担保するため複数の不動産を目的とした抵当権です。
設定方法
当事者の合意で成立します。同時に設定もでき、追加で設定もできます。
配当方法
同時配当
債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
※後順位抵当権者がいなくてもこの配当です。(大判S10.4.23)
異時配当
2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。
※次順位者に限定されません。広く後順位者も含まれます。
共同抵当の目的不動産が物上保証人の所有である場合は、後順位抵当権者は代位できません。(最判S44.7.3)
共同抵当権の放棄
放棄しなければ後順位抵当権者が392条2項の規定によって代位出来た範囲で、後順位抵当権者に優先できません。(大判S11.7.14)
時効
消滅時効
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
時効取得
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
抵当権の目的である地上権等の放棄
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
※この条文は借地権にも適用されます。
抵当権の侵害
抵当権は物権なので、その侵害に対しては物権的請求権(妨害排除請求権)と侵害者に対して不法行為による損害賠償も請求できます。
先順位の抵当権が実体上はすでに消滅しているのに、抹消されていない場合。
登記の抹消を請求できます。(大判T8.10.8)
抵当権の目的となっている山林上の立木が、抵当権者に無断で、かつ通常の用法の範囲を超えて伐採・搬出された場合。
部外排除請求権として、伐採・搬出を禁止でできます。(大判S7.4.20)
債務者が第三者に対して権利を行使しな場合、債権者が代わりに権利を行使できます。
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
不法占拠者に対しても行使できます。
占有権限の設定を受けている(抵当権設定登記後)占有者にも行使できます。(最判H17.3.10)
株式会社J.P.A.(Japan Progress Agency)