隠しごとは悪なのか?

 
 
 

「隠しごとをする人は悪い人だ」
 
 
 
そう断じるのは簡単ですが、果たしてそれは本当に“真実”でしょうか。
 
 
 
私たち探偵が扱う案件の多くは、「誰かが何かを隠している」という状況に端を発します。
 
 
 
浮気、不倫、借金、二重生活、家族に言えない過去。
 
 
 
隠された事実が明るみに出るとき、そこには痛みと混乱が伴います。
 
 
 
そして皆はこう言うのです──「どうして、隠していたのか」と。
 
 
 
しかし、これまで多くの調査に携わってきた中で私は知りました。
隠しごとの中には、“悪意”からではなく、“優しさ”や“恐れ”から生まれるものがあるのだと。
 
 
 
誰かを傷つけたくない。
拒絶されるのが怖い。
関係を壊したくない。
 
 
 
そんな不安から、人は事実を覆い隠します。
結果的に裏切りとなったとしても、その出発点は「守りたかった」という思いだったりもするのです。
 
 
 
もちろん、隠された内容がパートナーの信用を裏切るものであれば、それは正されるべきです。
しかし、私たちが真実を暴いた先にあるのは、「悪を裁く」ことではなく、「人間の弱さと向き合う」ことです。
 
 
 
隠しごと全てが“悪”なのではなく、
隠したまま相手を欺き続けること、傷つけたままの状態を続ける事が“悪”になるのだと思います。
 
 
 
探偵の仕事は、白か黒かを見極めること。
けれど、人の心は常にグレーで揺れています。
 
 
 
だからこそ、私たちはただ「事実」を届ける。
そこから「許すか、許さないか」を決めるのは、ご依頼者様自身なのです。